本の逆襲 内沼晋太郎 著

本の逆襲 (ideaink 〈アイデアインク〉)

「本」そのものの見方の転換

『本の逆襲』というタイトルからして本そのものの価値転換などを示唆していますが、この本では活字離れとか本が売れなくなったという大勢に対して、本そのものの定義から見直し、本の未来を作っていこうという内容です。

特に多くの人が「本屋」としての一面を持ち、本屋としての活動をこれまでの生活の中で実践していくことを勧めているような印象を受けました。

例えば読書ブログを書くとか読書会の主催、あるいは今従事している本業との掛け算的な取り入れ方など、いわゆる書店のような本屋だけに囚われないで、「本屋×〇〇」という形を提案しています。

本屋自体は利益率の低い商売なので、まずは本業で生計を立てておいて、副業的に本屋的なアイデアを試していくということ。

初めからお金を求めて動こうとすると、どうしても行動が制限されてしまいます。

そこでまずは生活の心配をしなくて済むように、本屋として楽しみながらアイデアを試してみるために、このような初め方がオススメとのことです。

私自身はやむに止まれずいきなり古本屋として開業してしまいましたが、確かに生活がかかっていると本気で動く代わりに色々な面白いアイデアが出てこなかったり、挑戦的なことは難しいと感じています。

一方で事業として回そうとするなら、この方法では厳しいのかなあとも思いました。

まあ、「本屋」としてどこまで本気でやりたいのか、その人次第になってくるのでしょうね。

 

本屋・本の意味合いを拡張する

この本では「本屋」が「書店」とは違うものであり、書店とは販売する本の置き場所であり、本屋とは本と本を必要とする人を結びつける存在…のように定義しなおされています。

本書で論じられる「本」というものは、すでに従来の文字が印刷された紙の束だけではなく、情報を伝えるあらゆるものを「本」と呼んでいるように感じられました。

著者なりの経験と実績、そしてご自身の考えからそのように主張されていることは、とても詳細な説明や再定義しようとする熱意から感じられることです。

しかしこれまで紙の本を「本」として認識し、扱ってきた私の印象としては、この本で提唱されている「本」の捉え方は、やや強引なところもあるかなあ…と思うところです。

著者の内沼氏自身も新刊書店B&Bという、「本屋×〇〇」を実践しており一定の成功は収めているようです。

著者の運営するお店は、ビールが飲めて本を並べている什器も買えて、毎日イベントを開いているという本屋で、これまた従来の本屋イメージとはかけ離れているものです。

そしてこの著者の本屋を語る上で、あらゆる情報媒体は本であるという再定義が生きてきます。

著者がこのような色々組み合わせて本屋を始めたのは、本とは情報伝達の1つの方法であり、電子ファイルで言えば拡張子にあたるものが紙で存在しているようなもの、と考えます。

その紙の本は紙になる前はなんらかのテキストデータであり、さらにその前は口述なら話された言葉、あるいはネット上に断片的に発信された記事かもしれません。

このように、本とは紙に印刷されたものであるという枠組みを拡張して、本になりうるものはすべて本であると言ってもいいのではないか、という視点を著者は持っています。

これを踏まえて著者の本屋を考えていくと、イベントを始めビールや什器も本であり売り物となり、それは再定義された本を並べている本屋であるということになります。

本書を読み終えて感じたのは、そこまでして本に拘らなくてもいいのではないかということでした。

 

本は従来の本の形だから本であり得たのでは

ひょっとしたら著者の意図を読み取れずに漏らしているからこんな風に感じるのかもしれませんが、「本」が文化的な立ち位置を維持し、歴史的には公共財である面が強かったのも、従来の本としての形があったからこそなのではとも思いました。

現在では製本された本以外にも、ネット上の記事やSNSの投稿、さらには電子書籍などと言った様々な媒体でまとまった量の文字を読むことができます。

そしてそれらは本書では新たな定義付けがされた「本」として扱われます。

しかし一方で私が違和感を感じたのは、例えば電子書籍などは便宜上「書籍」と呼んでいるに過ぎず、本ではないのではないかと思うところです。

いずれにしても「本」の「定義」とどう決めるかによってどうにでもなる問題ですが、心情的にというか何かスパッと割り切れないなんとも気持ち悪い感じが、この本で解かれている本の定義には感じられるのです。

それはただの好みの問題なのか、新しいものへの感情的な反発なのか。

駆け出しの古本屋ではあるが、新しい形の本ではない旧来の本を扱う身からすると、本書の定義に基づく「本」ではなし得ないようなことができている…とそんなふうに漠然と感じます。

この感覚は古本屋として私が「物体として実在する本」の転売によって生活させてもらっているからなのか、あるいは本そのものについての存在意義がそう思わせるのか。

内沼氏の本はまだ2冊しか読んでいませんが、なんだかこの方の記述する内容は、私にとってはどうも座りが悪く、納得したくてもなんだか拒絶感が出てきてしまうのでした。

ただ本書に書かれている、新しい形の「本屋×〇〇」の事例や、従来のままでは本を読まなそうな層への訴求による見込み客の拡大は、商売としては活かしようもあるように思いました。

古本を扱うせい(?)で私自身の価値感旧態然としたものに凝り固まらないように、こういうやや抵抗のある主張にも触れて行かねばなあと反省もするのでした。

 

古本屋五十年 青木正美 著

古本屋五十年 (ちくま文庫)

ザ・古本屋の一代記

この本は、本書の著者による、ご自身が開業して続けてこられた古本屋家業の主観的視点で描かれた、日々の活動記録とも言える本です。

東京都内で神保町の古書組合との関わりも詳細に描かれており、歴史的にも貴重な証言とも言える内容であり、これから古本屋を開業しようとする人にとってもかなり勉強になります。

決してこの方と同じ時代背景や環境、リソースを持っているわけではありませんが、戦後日本が立ち直る時代に、古本屋として社会に参画した立場からの記述は非常に興味深いものです。

また、古本屋志望者にとってはひとつの古本屋の形態としてのケーススタディとしての側面もあるのではないかと思われます。

模倣するにしても社会情勢や仕入れ先などの変化もあり丸々取り入れることは困難ですが、古本屋志望の読者が自分流に作り替えて取り入れる、示唆に富む資料としても貴重なものとなり得るでしょう。

歴史的古本屋を知るための読み物

本書は古本屋五十年とあるだけあり、戦後まもない頃の開業以前の状況から始まります。

その後開業し、仕入れ先を開拓したり、古書組合の仕事に携わったり、古書展への参加があったりと、次第に社会が豊かになってゆき、古本の扱いの変化とともに古本屋の立ち位置も変化していきます。

こうした過去から現在に至る長期間の記述を通して読み進めていくと、この先の変化についての考察も進めることができそうです。

単に読み物として読むにしても非常に面白くて引き込まれる本ですが、少し俯瞰的になって本の内容を眺めることでこれからの古本屋はどうあるべきかを考えさせられる一面もあります。

古本ブームの変遷など

本書は50年にわたる古本屋の歴史を綴ったものとも言える本ですが、当然その扱ってきた商品である古本についても記述があります。

その部分を読むだけでも素人同然の私には勉強になりましたが、特に印象的だったのは「初版本」と言われる本の初版が流行したことです。

今となっては初版だからと言って価値が上がることは滅多にありません。

むしろ改訂版とか色々出てくることを知っている私にとっては初版はまだ発展途上のような気がしてしまいます。

しかし一時的に初版本が流行り、初版本だけを買い占めた店が大儲けしたなんていうこともあったようです。

その後、「初版本は貴重で儲かる」という認識だけがなんとなく残っているのか、よくフリマサイトやネット上の通販では「初版」であることを推してやや高めの価格設定のものを見かけます。

価値が上がるのは欲しがる人が多すぎて品薄になるからであり、決して初版だから、という理由で高くなるわけではない。そんな当たり前だけどなぜが盲信してしまっていたことなど、認識を改めさせられることも多々ありました。

一つ一つ、なぜそういう現象が起こったのかについてその時の状況を追いかけることができるのも、本書のような丁寧な描写によるもののおかげだと言えます。

五十年も続いたらまさに名店

しれっとタイトルに「五十年」などと入っていますが、これは偉業とも言える期間です。

時代や個人の才覚、環境要因など色々な理由はありますが、本書のように五十年も継続して同一の事業、しかも古本屋という大きく儲けることが難しい事業において続けられたということがまず驚愕に値します。

神保町の古書店など長期的に続いている店舗もあり普通のことのように錯覚してしまいがちですが、神保町そのものの存在が、もはや世界に誇る古書街にまでなっています。

これらのことは日本における古書に関わる人たちの優秀さ故のことなのかどうかはわかりませんが、少なくとも本書を読む限りでは、仕事に対する姿勢が誠実で、葛藤を持ちながらも情熱を持って取り組んでいる姿が印象的です。

古本屋なんて儲からない事業をやるくらいなので、やはり本や本に関わることが好きなのだと思います。

本好きは一生のうち一度は古本屋をやることを考えるとも言いますが、実際に古本屋を立ち上げ、それを長期に亘り継続せしめていることは、それがもはや名店であることの証であるともいえるでしょう。

活字離れが叫ばれる昨今ですが、これからの時代に古本屋をやろうという人たちは、本書の著者のような先人たちの経験や知恵を継承しつつ、自分たちのスタイルを確立することが大切です。

そんなときには、本書のような貴重な文献を参照し、過去の叡智をしっかり取り入れていきたいものです。

これからの本屋読本 内沼晋太郎 著

これからの本屋読本

本と本屋のこれからの姿を考察した本

『これからの本屋読本』という、「本」と「本屋」に興味がある人そのものをターゲットにしたような、ど真ん中のタイトルです。

著者は「ブック・コーディネーター」を名乗る、他に類を見ない人と本を繋ぐことをミッションとして活動している方とのことで、広く本に関わってきた実績が伺えます。

そんな著者が書いたこれからの本屋の姿を考察した本には、そもそも本とはなんなのかという定義づけの見直しから、本を作っている出版社、本を一般の読者へと届ける書店というそれぞれの立場についても深く掘り下げています。

その上でこれからの本と本屋はどうなっていくのか、また本屋を志望している人にとってはどんなふうに「本屋」として生きていくのか、とてもリアルに肌で感じられるようなアイデアやその生み出し方のヒントも満載です。

いつか本屋としてやっていきたいと考える人にとっては、とてもリアリティに溢れた、具体的に自分の事業内容を考えることにつながる良い本という印象を持ちました。

 

「本屋開業マニュアル」としての活用法もある

本書にも書かれていますが、この本は本屋を目指す人が本屋を始めるにあたって知っておくべきこと(出版流通の独特の仕組みなど)や、やるべきことなども一通り書かれています。

特に参考になるのが、実際に書店を開業した経緯の紹介や著者自身の経験などを知ることができる点です。

一般化された定型的なマニュアルのような説明も便利ですが、やはり自分の事業として本屋をやろうとする人にとっては、先人の辿ったリアルな軌跡がわかることは心強いものです。

本屋開業に向けて本気度が強い方には、本屋になるための講座があることなどの情報もあり、私自身もいずれ店舗運営を考えている身からすると、非常に有意義な1冊とも受け取ることができました。

 

新刊書店と古書店の違いも列挙

本書半ばには、紙の色をグレーに変えてある部分があります。

この箇所こそは著者が意図して別枠として作った部分で、新刊書店・古書店それぞれについての開業のための必須知識のようなことが凝縮されています。

開業する予定がなく興味もない人は読まなくていいというほどに言い切る部分だけあって、逆に開業検討中やすでに開業予定が決まっている人にとっては、重要なことが簡潔に整理されて書かれています。

開業準備をしていたり書店員等の経験がある方にとってはすでに知っていることも多いかもしれませんが、私のようにまったくの門外漢だった者にとっては、改めて全体像を俯瞰したり、知識の再確認も兼ねることができ、非常に助かりました。

まさに本屋のための本、本屋読本である所以がここにあるという部分。

 

これからの本屋として生き残っていくために

本書のタイトルが『これからの本屋読本』とあるように、活字離れが叫ばれて久しく、出版業界全体の縮小が見られている現在にあって、これから本屋はどう立ち回っていくことが求められるのか、という視点からの考察も描かれています。

どうしても著者自身やその関係者まわりの方の事例ばかりが目立ちますが、著者がそれら取り組みを一般化し広く対象を拡大しようとされているような意図も感じられます(見当違いかもしれませんが)。

とはいえ一人の人物が表現しうる世界はその人の主観的なものであるので、その開示してくれた世界、これまで積まれてきた経験、これからの展望などを読者がどう受け取り、どう展開していくかは読者側次第とも言えます。

本書は本屋をやりたいと漠然と思っている層から、具体的に本屋を始めるんだいう層にまで広く訴求する内容です。

故に本書を読み進める間にも、本業との組み合わせ、これまでの経験との掛け合わせといった、本書で提示されている事業展開のアイデアをヒントにして、考えながら読み進めることになります。

示唆に富んだ非常に読み応えのある本です。

著者も1980年生まれという今最も働きざかりの年代であり、私自身とも年齢が近く、大いに刺激を受けることになりました。

本書の著者は大学で商学部に所属してブランディングを学び、本に関する活動を長年続けてこられた素地がしっかりあることもあり、本の中で展開されている考えについても一流の風格が漂っているように感じます。

この著者のようになるのは背景が全く異なる私には非常に困難です。

その代わりに、著者のような専門家ではなし得ないような形態での「書店的なもの」を生み出してみたい、そう思わせる力がこの本には感じられました。

それはひとえに著者の本と本屋への情熱が、この本には込められているからと思います。

本と本屋が好きである、という情熱に非常に共感できるところも、読後感がとても心地よいことのおおきな要因なのかもしれません。

 

古本屋の四季 片岡喜彦 著

古本屋の四季

 

定年後の古本屋開業に関するリアルな記録

本書は著者の片岡喜彦氏が、30代のころの夢でもある古本屋を開業し、その運営の日々をこまめに書き綴った記録を本にまとめたもの、という体裁。

これから古本屋を開業したい、実際に開業したらどんな感じなのか?などの1つのケースとして参考にすることも有意義な読み方です。

また、古本屋開業などではなく、単に古本屋が好きだという人にとっても、古本屋の店側の視点というものも新鮮でかなり楽しめる一冊となっています。

 

読み進めると店主と一緒に成長している気分に

本書を読み始めると、初め古書店の開業前から古物商の申請、古書組合への加入、店内の改装などの開店準備から始まります。

そして開店後にはユニークなお客さんやちょっとした事件なども紹介され、古本屋の番台に座っているかのような気分にもなっていきます。

側から見てあまり刺激的ではなさそう、と感じていた古本屋の店主ですが、そうした店側の実情を何ひとつ知らずにいた私にとっては、ただ本を読んで店番をしているだけ、というイメージが覆される内容でした。

淡々と、でも確実にしっかり毎日を過ごしていくことの大切さも感じられます。

 

儲けは狙っていないけれど…

店主で著者の片岡氏は、たびたび儲けを狙って営業しているわけではなく、定年後の楽しみとしてやっているということを書かれています。

収益第一で古本屋を開業したら、それはかなり苦しい経営になるであろうことは、素人の私でもなんとなく予想が付きます。

好きだからこそ古本屋をやる、その姿勢が大切であることがわかります。

また、そのような姿勢だからこそ収益がそこまで大きく出なくても、時に赤字が発生しても、そこで挫けずに続けられる原動力にもなるんだろうなあとも思います。

本書の帯に書かれているように、開業して10年も続いているということがお店の経営姿勢として正しかったのだという証明にもなっています。

日々特に派手なことをしているわけではなく、地道にコツコツと毎日楽しみとしての古本屋をやっている、その積み重ねが10年以上にもなると、そのこと自体がとても偉大な実績であると思えるようになってきます。

著者の綴る日々の古書店の状況を読み進めていくと、かなり「古書片岡」に対する愛着というか親近感をもってしまい、10年も続いているんだということに対する感慨深さすら感じます。

そう思わせるだけの実績もさることながら、著者の書く文章が優しい雰囲気を纏い、いつしかその心地よい雰囲気に巻き込まれている、そんな風な読後感を得た本でした。

古本屋やってみようと思うなら、この「古書片岡」流のやり方もあるんだということが、大いに参考にもなり、自分流の経営に生かせるところがあれば取り入れてみるのもよさそうです。

 

がっつかずに古本屋自体を楽しむ。

古本屋をなぜやりたいのか、の原点に立ち返ることの大切さも学ばせて頂いた一冊。

 

せどりの思考法 ~お宝商品は「違和感」で探せ  フジップリン著

sedori no sikouhou

せどりの思考法 〜お宝商品は「違和感」で探せ

「せどり」視点で見る商売の基本原則

本書は、店舗などで販売されている商品の中から転売して利益を得る、いわゆる「せどり」に関するノウハウをまとめた本です。

これからせどりを始めようと思う方へ向けて書かれているような印象を受けますが、すでにせどりを実践している方にも(やや物足りないかもしれませんが)、初心に返って自分を見直すきっかけにもなると思える本でした。

「違和感」を活用してせどりをするという視点は、現役せどらーにとっては暗黙のうちに実行しているかもしれませんが、それを言語化して再現性を持たせる意味でも一読の価値はあるように思えます。

 

著者について

本書の著者であるフジップリン氏は、ご自身でもせどりを実践して利益を得て、その経験の中から積み上げたノウハウを伝える講師として活躍されている方のようです。

現在では実績もあり、せどりスキルも折り紙付きと言える著者ですが、当然初めからうまくいったわけではありません。

YouTubeでご自身のチャンネルも開設されており、そこでもせどりを始めるきっかけやせどりのノウハウ、心構えなどをお話していいます。

せどりをご自身の事業として実践する背景には、一人の人間の切実な事情があったりするものです。

どんな人も何かしらの理由はあるのかもしれませんが、この方の場合はなんだかそれが非常にリアルに感じられ、まだせどりをはじめてもいない自分にも深く刺さったように感じました。

そんな親近感を覚えるような著者が、これからせどりを始めて利益を得て、それを維持発展させていくことを心から望んで書いた本が本書である。そんなふうに思える著者であり本であります。

 

「違和感」を感じて利益商品を察知する

さて本書の肝になる内容ですが、いわゆる違和感を活用して利益商品を見つけましょう、というものです。

言葉だけ聞くとなんだかセンスのようなものがなければ難しいのではないか、と思われるかもしれません。

確かに中身を知らずに「違和感」を察知せよ、なんて言われたらせどりセンスとでもいうような天性のものがないとできないのではなんて思いがちです。

しかしこうして本になり、他者へ伝達することができるノウハウとして確立しています。

この本を読めば、せどりにおける「違和感」を察知する能力が身に付くようになっています。

 

商品の「違和感」とは?

本書のいう商品の違和感とは、そのものズバリ売り場で浮いている状態のことを指します。

そしてそれを察知するには、商品の「置かれ方」「見た目」「値付け」「POP」などを注意深く観察し、利益商品である可能性を察知します。

店側が積極的に売たい商品ではなかったり、在庫過剰で安売りしてでも捌いてしまいたいという商品がこうした違和感を纏っていることが多いようです。

せどり自体が、需要と供給のバランスが崩れているところを狙う手法であるため、まさにこの着眼点は本質を得ているものと言えます。

ただしこの時に商品知識があるものだと「どうせ売れない」「需要が過剰だ」などという思い込みにより見逃してしまう危険性も指摘されています。

本書の方法が秀逸なのは、「商品知識」が無いほうが、利益商品を逃さず手に入れられるということであり、そのため自分の専門外の商品も扱うことができるということになります。

この専門知識に縛られない手法こそが、本書が他のせどりノウハウや類似本と一線を画する要因でもあります。

この本を読んで自分もせどりを始めてみよう、と思えた方はとてもラッキーですね。

 

ノウハウをいくら集めても…

ここからは本書の内容というよりはせどりの実践に関することを少々。

せどりに限らずですが、どんな副業ノウハウやお小遣い稼ぎに関してもノウハウだけを身につけて、それを実践しなければ何にもなりません。

また、新しいノウハウを手に入れてそれを試してみて、その段階で利益が出なければゴミノウハウだと切り捨ててしまう行為も同様です。

私が思うには、巷に溢れる膨大なノウハウ(副業に関するもの、仕事の進め方に関するものなど)は、どれも一定の成果があった実績があるからこそ本になったりしているわけです。

自分に合う合わないの相性もありますし、さらに習熟度の問題もあります。

また副業といってもそれを実践するための道具を揃えたりと、初期投資がかかることがあります。

こうした様々な参入障壁とも言える壁が存在するからこそ、すでに実践している人たちの利益が担保されているとも言えるのでしょう。

しかし、これからなにか副業など始めようと考えている方には、ぜひ初めの1ヶ月ほどは成果なしでも我慢してほしいと思っています。

そしてその我慢の期間を過ごすなら、そしてせどりに挑戦すると決めているのなら、本書の方法をまずはできるところから始めてみるのがおすすめである、とごく主観的な意見ではありますが主張させていただきます。

私自身もまだ利益は微々たるものですが、赤字は出さずに回転させるところまではきました。

そして始めてから3ヶ月かかりました。

1ヶ月程度では利益どころが赤字も垂れ流し状態です。

一方でなんとなくの肌感覚で、こうすればいいのかも…というものが掴めてきます。

でも利益が出るとは到底思えない状態です。

それでもなお、愚直に本に書いてある通りに行動し続けることで、自分なりのアレンジというか、自分流のノウハウ活用の形が身に付いてきます。

そこまでくれば、きっとあとは数をこなして仕入数自体を増やしていけば利益は比例して増えていく流れになっていきます。

だから初めたばかりの苦しい時期を、どうか本書を信じて乗り越えてみてください。

 

せどりの状況について

せどりで稼ぐ、と言っても闇雲に商品サーチすれば利益商品が見つかるとは限りません。

一昔前にはブックオフなど新古書店と言われる店舗によるせどりが流行し、店側がせどり禁止などの処置を行うほどでもありました。

本などの商品はサーチ自体が容易で、短時間で大量に調べることが可能であるということも古本せどりが流行った一因でしょう。

そんな古本せどりでは、せどらーが片っ端から本をサーチすることで一般客の買い物を妨害している(そんな意思はないにしても)ように見られ、せどり禁止となる店舗が出てきました。

さらに古本の価格が1冊100円やそれ以外は定価の半額という低い水準から、需要の高そうな本などは定価の2~3割引や低価格本も200円以上になるなど、利幅が激減する状況にも変化してきました。

そういった要因が重なり、今では古本せどりは稼げないといわれて久しい状況です。

比較的簡単にせどりができると言われていた古本であっても、そもそも全数検査をしないと利益商品が見つからないということになります。

そしてさらに現状では利益商品自体が激減しているため、全数検査をしたところで利益商品が見つからないこともザラにあります。

一方で本書のような「違和感」でまずは利益の出そうな商品群を見つけ、その限られた範囲内で徹底サーチする、という方法を実践することで労力の削減ができます。

そして一般的な目玉商品ではないものが多い「違和感」を纏った商品は、人気のない売り場にあることが多く、そこでサーチをしていても迷惑をかけにくいこともあります。

そしてせどりの対象を古本に限らない(家電や雑貨などなんでも対象になりうる)ことで、利幅の大きな商品分野を次々に開拓できる可能性がある、という強みがあります。

こうしたこともあって私自身は本書を読み終えた時、せどりはむしろ埋もれた商品を必要な人へ届けることができ、かつ儲けも得られる真っ当な商売ではないか、と思ったのです。

「転売ヤー」などと揶揄される人たちが目立つのでせどらー自体も肩身の狭い思いをしがちですが、どんな商売でも一部の目立つ存在で印象が悪化することはあります。

せどらーは楽をして稼いでいるなどと思われたりして、妬みの対象にもなりがちです。

しかしせどりの実態を知り、苦労に苦労を重ねて利益を生み出す行為を体験した後には、きっと誇りを持ってせどりを実践できるようになると私は思います。

そんなふうに思えるようになったのも、本書を読み、それを実践し、ごくわずかながら利益を生み出し始めているからなのです。

だから本書を書いてくれたフジップリン氏には大いに感謝するところです。

本当にありがとうございました。

 

書店の近代 本が輝いていた時代 小田光雄 著

書店の近代―本が輝いていた時代 (平凡社新書)

近代以降の書店の変遷を辿った本

本書の「まえがき」には、”書店の風景の変容を通じて、近代文学も含んで、ささやかであるが近代出版業界を表象する試み”とあります。

現在行われている出版業界独特の流通方法が確立された明治時代以降の歴史だけではなく、その流通機構が生まれる要因ともなった江戸時代の状況から記述が始まっています。

書籍に携わるものとしてはこうした出版業界の成立過程を知っておくことはとても有意義でありますが、一読者として特に書店経営の計画などをお持ちで無い場合には、やや退屈な本となりうる印象です。

本書のような分野の本を手に取る読者自体、本や書店が好きで、いつかは自分も古本屋などの経営に携わりたいと考えている人が大半とも思われますので、きっと本書をお読みになられた方の大半は面白く通読できるものと思います。

内容の概観

本書は出版業界の変遷を辿った、ある意味研究レポートのような内容となっています。

目次を読むことで本書の扱う内容や時代が大枠掴めるので、以下に転載します。

1 江戸時代の書店
2 『江戸繁盛記』のなかの書店
3 明治維新後の書店
4 明治前期の書店と出版社
5 書店の小僧としての田山花袋
6 教科書と金港堂
7 洋書店中西屋
8 近代書店としての丸善
9 社会主義伝道行商書店
10 『破戒』のなかの信州の書店
11 尾崎紅葉と丸善
12 芥川龍之介と丸善
13 梶井基次郎と京都丸善
14 丸善の店員だった佐多稲子
15 南天堂と詩人たち
16 人類学専門書店・岡書院
17 円本時代と書店
18 円本・作家・書店
19 上海の内山書店
20 艶本時代とポルノグラフィ書店
21 新宿・紀伊国屋書店
22 特価本書店・帝国図書普及会
23 図書総目録と書店
24 京都・西川誠光堂
25 日本出版配給株式会社と書店

これら目次を見渡してみると、現在も存在する書店名も散見されます。

今では大手の有名書店となっている各書店が、歴史的にも出版業界で大きな役割を果たしてきたということがわかります。

書店を利用する側からしたら、そのお店の由来や成り立ちなんて知らなくても全く問題ありませんが、こと本好き・書店好きの身としては、これらの由来を噛み締めながら本を買いに行くというのも楽しみの1つになり得ます。

知識をつけ出版業界についての理解を深めることも本書を読む目的の一つですが、書店に行くたびにそれぞれのお店の歴史や成り立ちに思いを馳せる楽しみも得ることができる本となっています。

内容や立ち位置としては、この本よりも古い本で脇村義太郎著『東西書肆街考 (岩波新書)』が詳しいです。

本書を読んで、より深く、より詳細に書店・書肆について掘り下げてみたいという方は、東西書肆街考を手に取ってみるのもおすすめです。

こちらは本当に書店やその歴史に興味がないと、眠くなりそうなほど細かく詳細に書かれています。

そしてその分、書店の成り立ちや現在も存在する大手書店や出版社が、もともとどのような形態で始まって、どのように現在のような業態に収まったのかなどの流れも掴むことができます。

知ったからと言って特に役立つことも思い当たりませんが、少なくとも本が好きであるという誇りにも似た気概を持つことになるのでは無いでしょうか。

こちら側(書店運営側)に回ろうとすると、一般読者としての知識だけではわからない用語なども出てきます。

そんな時、本書のような本を一冊でも通読しておくと、意外と知らなかった言葉などを知ることもでき、よりディープな古本・古書ファンとの交流の可能性も生まれてきそうです。

 

古本通 樽見博 著

古本通 市場・探索・蔵書の魅力 (平凡社新書)

”古本通”の著者ならではのディープな古書業界本

古本が好きで古本屋に通い詰めるような本の虫にとって、いつも訪れている古本屋がどんな風に運営されているのかは、かなり気になるテーマです。

また、自分が読むための本だけではなく歴史的な価値がある本のコレクションや、埋もれた貴重な本を見つけ出すことを喜びとする古本ファンにとっては、プロの目から見た探索のコツについても知りたいと思うところ。

本書は長年にわたり古書流通に関わってきた著者が、ある種の独特の世界でもある古本の世界を味わい尽くすための秘訣のようなものを語っています。

間口の広い、かと思えばハマればその奥深さに圧倒される世界でもある古本。

そんな味わい深い古本の世界をじっくり楽しみ、そしてさらに深く楽しみ味わうためにも、”古本屋側”からの視点でもある本書、一読の価値アリです。

著者について

樽見 博(たるみ ひろし)
1954年茨城県生まれ。法政大学法学部政治学科卒業。79年日本古書通信社に入社。以後、月刊「日本古書通信」の編集、『全国古本屋地図』の編纂などに従事。神保町生活26年、古本との生活が生涯の半分を超える。2004年、私家版『古本ずき』を刊行。

奥付

平凡社新書318
古本通 市場・探索・蔵書の魅力
発行日-2006年4月10日 初版第1刷
著者-樽見博
発行者-下中直人
発行所-株式会社平凡者
印刷・製本-株式会社東京印書館
装幀-菊池信義
ISBN 4-582-85318-8
NDC分類番号024.8 新書判(17.2cm) 総ページ208