本との関わりの模索【『本の時間を届けます』篠賀典子 芹澤健介 北條一浩】

本屋好きに向けたパワフルな女性店主による本屋紹介本

この本を書店で見つけて思わず手に取った時のことを思い出す。

本書の表紙には、きっと小規模な個人商店のような古本屋だと思わせるような、素敵な雰囲気の本棚のある部屋の写真。

本好き・古本好きには心に刺さる写真だ。

なぜなら、ものぐさなのに古本屋を始めてしまうほど本が好きな私が、衝動的に購入してしまったくらいだから。

そんな本の内容は、ユニークな本との関わりを模索し続け、一定の形をかくりつしつつある女性たちの記録である。

「特別感がない」特別な女性のお店

本書に取り上げられた方々は、

・女性店主・主催者の個人の力を大切にしている

・スタートして10年に満たない

・地域に根ざしている

という特別でない、身近な存在で、本を愛する女性だという。

私自身が古本屋を立ち上げようと思い動いているからなのか、若い人や女性が活動している割合を多く感じる。

その影響か本書のような形で書店、特に古本を扱う独自の形態の書店が増えているのでは、と思う。

この本を手に取ったときは未だ起業前であり、実店舗の出店も考えつつ準備していた時期でもあるので、そんな私の心に深く刺さったことは間違いない。

そして本書を読むことで得られたのは、やはり従来のような古本屋のオヤジが薄暗い店の奥で静かに読書しながら店番しているというイメージは実現困難だろうということ。

わざわざそんな古き良き伝統的古本屋に行こうという奇特な人は、きっと私のようなマニアックな人種に限られる。

それにそんな人は数が限られる。

こんな特殊な人種を対象にした商売など、今の時代に成り立つわけがない。

本書に出てくる女性店主たちやその経営する店舗、運営の工夫やアイデアを読み進めるにつれ、私は希望を失っていくのを感じた。

いち古本ファン、書店好きにとってはパラダイス

一方で、一読者、一古本ファンとしては、このような素敵な雰囲気のお店が増え、古本を扱う店が増えることは非常に喜ばしいことだと思った。

ぜひ自宅の近所にもだれか出店してくれないかなと思う。

つまり、そういうことだ。

昔からの古本好きであっても、この本に取り上げられているような雰囲気やコンセプトの店に惹かれていく。

従来型の古本屋でもよいのだが、やはり新たに行ってみようと思うのは、この本に出てくるような店なのだ。

そう思い至った時、私自身が実店舗を持って古本屋を営業することは無期限に延長され棚上げ案件となったのであった。

事前じこのような本を読んでおいてよかったと思うと同時に、私は本好きではあるが、本を提供する空間を自分でプロデュースしたりすることにはあまり関心がないのだと気づくこともできた。

やはり競合となりうる人々の軌跡を追うことは、事業運営を始めるにあたっては重要なことなのだなと改めて思う。

よくある本好き向け本屋紹介本のひとつ

『本の時間を届けます』の本の内容についてはほぼ触れずに記述が終わることになるが、この手の本は昔から継続的に出ている点に触れておく。

この手の本の内容も、注目を浴び得るような華がある場合が多い。

一方で古本屋を自分で運営しようと思う人は、この本に出てくるような人々とは対極となるような人だ(私のような根暗な中年のおっさん等)。

これからの書店運営は、志があって地域と共存し、華のある女性のような人が立ち上げるものでなければ難しいのではないかと心の底で思ってしまいがち。

だが、私の個人的な肌感覚でいえば、むしろこの本のケースはレアケースであると言える。

街の古本屋やイベントとして開催される古本祭、地方へ旅行したときに立ち寄る古本屋で、この本のようなお店には滅多に出会わないからだ。

だからこそ本にできるほどのネタとなるわけだが、情報の摂取が偏ると余計な自信喪失に繋がって自らの夢をあきめる判断をしてしまうかもしれない。

これから古本屋をやろうっていう挑戦者に対しては、ぜひ本書のような本は参考程度に受け取り、自分が読者だったとしたら、という視点で楽しんで欲しいと言いたい。

なぜなら自分で古本屋をやろうと思うほどに、あなたは本が好きなのだから。