「怒らない」選択法、「怒る」技術 苫米地英人 著

「怒らない」選択法、「怒る」技術 

苫米地英人 著

「怒る」ことを活用するコミュニケーション法

本書では、無理に怒りを抑えたり、あるいは感情のままに怒りをぶちまけるのではなく、
正しく怒るということを説明していきます。

その過程で、怒るべき場面、怒るべきでない場面など、時と場合によって使い分ける事が
重要である理由も説明されます。

感情をあらわにする事がタブー視されている現在、感情を押し殺し病気になってしまったり、
への危害といった結果も招きかねません。

そんな病んでしまいがちな現代において、正しい怒り方の習得を通じて、そもそも怒らなくて
良い状況を作り出し、そして自分の利益を守るための本来の怒りの使い方を説明します。

「怒り」は生理現象

日本人は波風立てないように、怒るべき場面で怒れないと言われています。
本書の内容に沿って自身の経験に照らしてみると、怒るべき場面でも
我慢しているケースに思い当たります。

対して怒らなくてもいいような人が、やたら怒っていたり、怒っているそぶりを
見せたりしている場面にも出くわします。

怒りはかなり激しい感情で、エネルギーを持っています。
そんな怒りを我慢し続けていると、とんでもないストレスが溜まっていきます。
なぜなら怒りは、生理現象だからです。

生理現象を我慢していては、同然心身に無用なストレスがかかり、
その結果として健康を害してしまったり、最悪のケースでは命を落とすこともあります。

本書の根本にあることは、「怒りは生理現象である」ということ。
多くの人が共生する社会では、コミュニケーションに障害を来すような感情を
露わにすることは良しとされません。

ですがそれは、本来怒るべき場面で怒らず、怒ってはいけない場面で怒っているから
顰蹙を買っているに過ぎないのだ、というのが本書の主張になります。

怒ってもいいケース、怒るべきケース

では、怒ってもいい場面とはどんなことをいうのでしょうか?
まず、「予想外のことが起こったとき」。
次に、「自分が損害を被った(被る恐れのある)とき」。
この2点に集約されます。

まず1点目の「予想外のこと」というのは、充分に考えつくした上での予想外になります。
状況から考えて「それは予想できただろう」と思われる様な場面ではありません。

本の中の例では、
「レストランのサービスの悪さに対するクレームを言ったら、それに逆ギレされた場合」
と言うのがありました。

これはサービスを提供する側の不注意によるクレームですから、本来はクレームが発生しない
ように注意すべき事例です。

しかしクレームを受けた側からしたら、自分の不手際に思い至らないからクレームになった
くらいですから、当然予想外のこと。起こってしまうのは仕方がないのですが、
これは「怒ってはいけない」ケースです。

状況からして、サービスの提供する側というのは、どんなに万全を期していてもクレームが
発生することを常に備えている必要があります。それを怠っているため、当該事例では
怒るべきケースではないといっています。

このように怒っていい基準を予め決めておけば、もしも自分自身が怒りそうになっても
実際に怒るべきか否かの判断ができるようになっていきます。

正しい「怒り」には高い抽象度が必要

本書で説明している怒り方を身に付けておけば、怒りを悶々とため込まずに済み、
さらに相手と自分が共に利益を享受できる道が模索できるようになります。

そして、この怒りのコントロール、「正しい怒り方」において重要なのが、
抽象度を上げることが不可欠である、と言っています。

抽象度という言葉が伝わり難い概念のため、この本では便宜上IQと表現していますが、
ニュアンスとしては知能とか視点の高さといった感じです。

抽象度を高く保つことによって「怒りそのもの」に集中するのではなく、その怒りの原因と
なっているものを広く見渡し自分の利益と共通する部分を目指して意見をぶつけ合う。
その広い視点を得るには、抽象度を高める必要があるのです。

また、怒りの種類として
コミュニケーションとしての怒り、と言うものもあります。

例えば夫婦喧嘩の場合、
一緒に子供の成長を願っているのにその方法論でぶつかり合うなど、
激しい意見のすり合わせに伴う怒りの表出ですから、
コミュニケーションの1つに当たります。

以上のように、怒りというのは正しく使うことで、
本来は非常に有用なエネルギーになり得るのです。
そしてエネルギーが強いがゆえに、我慢して溜め込んではいけないものなのです。

この本が向いている人、オススメしたい人

本書は怒りの正しい活用方法、むやみに怒りを暴走させないための方法論です。
日常的に怒りを発散できないでいたり、逆に感情のコントロールが難しいと感じている方に
必要な本であると言えます。

日常的に怒りが発生する場面というのは、大なり小なり、たくさんあります。
そうした怒りの感情を、全部好ましくないものとして溜め込むことがないよう、
本書を通じて怒りの正しい使い方、また怒りの使いどころを身に付けて頂きたいです。

本書から得られること

まず、「怒り」は生理現象であること。我慢はよくない。
次に、「正しい怒り方」「怒るべき場面」が存在すること。

適切に怒りを表明することにより、不用意に感情を溜め込まずに済むようになり、
自分自身の利益と相手の利益が守られるようになる。
結果的に怒りを抱く場面も減っていき、穏やかな日々が得られる。

書評まとめ

本書は、社会生活を営む中で問題となりがちでデリケートな問題に対する
一つの回答を示しています。

本書に示されている考え方、具体的な対処方法などを身に付けることで、
自分の感情を無理やり押さえつけることから解放される人が多いと思います。

感情の発露は全て好ましくない、という風潮が出来上がっていますが、それはまた
人間らしさの欠如となって、社会に閉塞感をももたらしています。

本書のような感情を生理現象であると認識し、それを溜め込まず本来の利用法である
自らの利益を守るために使うことができれば、それが巡り巡って相手の利益をも守ることに
繋がり、関係者皆が幸福になっていけます。

まずは本書を読まれた人から、正しい怒りの活用方法を実践して頂き、そうした感情の
活かし方が広まっていくといいなあと思える読後感となりました。