快視力 視力の眼から心身の眼へ 田村知則 著

健康

快視力—視力の眼から心身の眼へ

視力の定義を覆す本

本書は眼鏡やコンタクトレンズの屈折検査の専門家である著者が書いた、
本来の視力を引き出し、物の見え方を補助する眼鏡のあり方を提唱するものです。

現在、特に日本で顕著だとのことですが、「遠くが見えること=視力がいい」とする
風潮が非常に強いといいます。

近くがよく見えて、遠くに焦点があいにくい場合、視力が悪いと言われます。

一方で遠くがよく見えて、近くが見えにくい場合、老眼や遠視という表現は日常会話でも
なされてはいますが、目が悪いという印象をあまり受けません。

このような環境では、遠くを見るより近くを見ることの方が圧倒的に多い現代社会でも、
遠くのものがよく見える状態をよしとし、それを目指す視力矯正が行われがちです。

その矯正視力で近くのものも(とても頻繁に)凝視する機会が多いために、どんどんと
近視の方向へと視力の調整力は働いていきます。

結果として、より遠くが見えにくくなり、さらに強い矯正をかけることになります。

本書では、そのような遠くを見るための「視力」を絶対視し、視力をとにかく上げる
ことに執着するのではなくて、眼は脳と密接に関わっているという考えの元、
目と脳の情報処理系の負担が少なくなるような、本来の見え方とも言える状態である視力
(心身の眼)を実現する眼鏡を作ることを提唱しています。

目玉1つ1つのレンズの性能だけではない、モノの見え方とは?という深遠なるテーマを
掘り下げている名著と言える本です。

 

本書の内容

目次より
1章 ストレスだらけの現代人の眼
2章 自分の目の使い方を知る
3章 「見る」という眼の仕組み
4章 眼と脳、眼と心
5章 視力を超えて「できる眼」へ
6章 眼の能力を高めるメガネとは
7章 スポーツビジョンの本質と誤解
巻末 視線のチェックシート

 

本書では眼を取り巻く環境、現代社会での生活における眼の使い方、そして「眼」そのものの
仕組みやものが見えて認識する仕組みなど、「視力」と一括りにしていた能力について、
かなり深く掘り下げていきます。

世界的には眼鏡やコンタクトレンズといった物の見え方を矯正する器具は医療機器として
扱われています。

もちろん日本でも眼科医の処方箋に基づいて眼鏡を作ることもできますが、最近では簡単に
視力検査を行って、安価にかつ短時間で作ることが出来るようになっています。

元々眼鏡を作るためには数万円はかかるものという認識が一般的でしたが、
今では5,000円から、などという眼鏡が増えてきています。

眼鏡を安く作れることでファッション性を求めたり、コーディネートの一部として楽しむこと
も気軽に出来るようになり素晴らしいことです。

しかし簡単に検査をしただけの眼鏡を使っていると、目が疲れたり肩こりや頭痛などの症状が
出てくることもあります。

私自身は、パソコンでの長時間の作業や、長い時間の読書などをしたあとには、眼の奥が
重たい感じや軽い頭痛を感じることがかなりありました。

これは遠くを見るための視力を強化した眼鏡をかけているからで、近くを見ることには
適していないことが考えられます。

さらに、人によって眼の使い方はみな異なっており、左右の眼で高さが違ったり
視線が中央によりがちだったり外側に広がりがちだったりと微妙な違いがあります。

それらの相違は脳の情報処理過程で補正され、脳が視覚を認識する上では違和感を修正して
視覚として認識されています。
ですから、多少の視線のズレなどには気付きにくいのです。

しかし絶えず脳が左右の眼から送られてくる視覚情報のズレを修正し続けていると、だんだん
脳の情報処理をする領域も疲れてきます。

少しずつの負荷が蓄積して、長時間近くを見続けるとか、たぶん合っていないであろう眼鏡を
使い続けた後には、頭痛や眼の奥の重さが現れてきてしまうのです。

そうした普段、バックグラウンドで行われている処理を軽減し、眼本来の見え方をサポート
してあげるためには、両目のバランスや見え方の癖、普段の眼の使い方などを細かく検査した
上で最適な眼鏡を作ることが重要になってきます。

そこで問題になってくるのが、近くを見たり遠くを見たりと、状況によって眼の使い方が異な
ってくるということ。

本来であれば、眼鏡は状況によって使い分けるのがベターです。

例えば車の運転用(遠くを見たり、広い視野が必要)や家の中用(近くを見ることが多い)
などと複数の眼鏡を持つことが推奨されます。

しかし本当に精密な検査を行って眼鏡を作ろうとすると、10万円近くのお金がかかります。

そこで、遠くを見ることだけを重視するのではなく、ある程度の視力を犠牲にしつつ、眼や脳
にストレスのかからない眼鏡を作ることが次善の策となります。

そして近視の人の場合は、読書やパソコン作業をする時には眼鏡を外す、などひと手間を加え
ていくことが、眼と脳の負荷を減らし、本来のその人のパフォーマンスを引き出すことにも
つながってくるのです。

 

まとめ−「できる眼」実現のための眼鏡を作ろう

以前「視力を下げて体を整える 魔法のメガネ屋の秘密」の読書記録を書いた際にも言及した
「認定眼鏡士」が在籍するお店で、まずは自分の眼に合った眼鏡を作ってみることです。

今、コンタクトレンズや簡単な検査だけで作った1万円程度の眼鏡を使っていて、日々、
頭痛や肩こりに悩まされている人の場合、眼鏡が合っていないこともあり得ます。

そんな時には、自分の眼に合っている眼鏡なのかを確かめてみて、予算が許すのならば
認定眼鏡士のお店で、精密な検査結果から作った眼鏡を試してみることをお勧めします。

視力検査だけではなく「両眼視機能検査」という、両目のバランスを測定する検査(これは
眼科などで斜視などと診断された方が「プリズムレンズ」を導入する際に使う検査、とのこと
です)で見え方の質を測ったりするのです。

そうした検査に基づいて作った眼鏡をかけると、だんだんと体の歪みや視覚修正のために
無理をしていた体の各部が正常に戻っていく…ということもありうるようで。

全て眼鏡のせいとも言えないでしょうが、慢性的に身体が辛いとか頭痛、肩こりがひどい、
という場合には、眼鏡を見直してみるのもいいのではないでしょうか。

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