カブで、ちょっと日本一周に行ってきます! 下川原リサ 著

「カブで、ちょっと日本一周に行ってきます! 」●下川原リサ著 (Naigai Mook)

クロスカブ110で日本一周した女性の記録

本書は「ミスユニバース埼玉代表」や「ツインリンクもてぎエンジェル」と言った経歴を持つ著者が、バイク乗りなら一度は目指そうとする「日本一周」を達成するプロセスを記録したものです。

本業が物書きではないのでそこまでこなれた文体ではないのですが、それがかえって旅のリアルさというか、一般人らしさというか、親近感のようなものを感じさせる魅力があります。

上記のような実績があるにもかかわらず「一人のバイク乗り」としての視点を浮き立たせているのが、そういった要素かもしれません。

著者自身も言っているように、積極性が足りない自分を変えていくために色々挑戦されているようで、そして実績まで出されているところが素晴らしいと思いました(という上から目線でごめんなさい)。

私も原付1種ですがスーパーカーブのファンで日々乗り回している身でもあるので、この本が発売される情報をたまたまTwitterかなんかのタイムラインで流れてきて、その場で予約注文してしまいました。

なんか、こういうキレイな人が書いている本を予約注文してまで買う、というおっさん(私のことです)はなんかアレですね…。

とは言え、純粋にバイク乗りとして、そしてカブで日本一周といういつか叶えたい目標を先に達成された方への敬意を持って読ませていただきましたよもちろん。

よくあるブログの日本一周記のような構成

こんなこと言うと身も蓋もないんですけど、日本一周した人のブログを追いかけているような感覚でスラスラと読み進めていける構成になっています。

途中にコラムが挟まっているのですが、コラムの前後で文章が切れてしまうと続きを見失ったりはしましたが、そういうところが荒削りというか正直読みにくいんですが、一般の身近な人が挑戦しているんだという、不思議と応援する気持ちになっていくのです。

完璧に洗練されているもの、プロが校正して体裁を整えている部分もあるのでしょうが、あえてこうした形で文章を本人が書いたままの形で載せているのだとしたら、なんだか先読みされているみたいです。

実はそんなことは一切なくて、ただ編集の時点で気づかなかっただけ…という可能性もありますが、ここは私が本書に対して親近感を感じたことを正解と仮定し、あえて残してあるんだとうことにしました。

そうすれば自分がもしカブで日本一周して同じような本を出すとしても、体裁がちょっと乱れていても「いやいや、それは親近感を感じてもらうための演出だよ、キミ」って言えますし。

それにこの本のそういうところに親近感を感じたのですよ、という根拠にもなります。

解釈なんて人それぞれですよね。体裁に拘る人やなんか対抗心のようなものを持って読んだとしたら(そう言う人はそもそも読まないかも…)、また別の解釈、印象を受けるのでしょう。

不思議なものです。

日本一周の行程の参考になるデータも記載

カブで日本一周の費用

この本の実用的なところは、まず費用がどれくらいかかるのかと言う点が明確なところです。

女性一人旅というと、むさ苦しいおっさんが旅をするのとは違って、色々気を使うところも多々あるのではないかと思うのです。

だからこの本に書かれている旅程での費用は、少なくともそれだけ用意しておけばおっさんの旅には余裕が出るんじゃないか?と思えるものなのです。

(が、通読するとわかりますが、かなり無駄を省いた旅慣れた仕様になっています)

ちなみにこの旅でかかった総費用は568,210円とのことでした。

細かい内訳はぜひ本書を購入してご確認下さい→https://amzn.to/3p3UkoM

意外と金額がかかっていない(日程も120日程度、4ヶ月弱です)ので、普通に家借りて住んでいるよりもお金がかかっていない(1ヶ月あたり14万円程度)のですよね。

なんだか家を買ってローンで苦しんでいる自分がアホのように感じます。

旅をしながら人生を謳歌することと、家を持って(または借りて)定住することは、そこまでかかる費用は変わらないと『FIRE 最強の早期リタイア術』でも言及されているところ。

一度は旅をしながら自由気ままに生活してみたいと思う私にとっては、『FIRE〜』も本書も、大いに勇気づけられる内容となっているのでした。

カブで日本一周の実走行距離

日本一周っていうとかなりの距離を走るだろうなって思いますよね。

日本列島がなんとなく3,500キロくらいだからその倍と入り組んだ海岸線含めて1万キロくらいかな…なんて思うのですが、本書の旅で実際に走った距離は19,730キロだったようです。

内陸部にも入っていったということも書いてあるので、単純に列島往復しただけではないんだというのはわかります。

でも実際にどれくらいの距離なの?という予想は大きく外れました。

ということは、この本の実データは役に立つと言うことです。

約2万キロということは、エンジンオイルの交換一つを取っても、メーカー推奨の2,000キロごと交換を基準にしても10回は必要なのがわかります。

それにタイヤも5,000キロごとに交換目安とすれば3〜4回ほど交換する必要がありそうだ、と言うふうに思います(本書ではタイヤ交換は1回のみでした)。

乗り方や乗る人の重さなどの条件面での違いはあれど、実際の日本一周の行程ではそこまでタイヤ交換には神経を使わなくてもいいのかな、とわかります。

実際に日本一周した記録の価値

なんだかんだ言ってこの本の存在意義というのは、実際に原付二種で日本一周してみたときの諸々のデータが載っていると言う点がもっとも意義深いなあと思いました。私にとっては。

別の方が読めば、著者が色々な挑戦をするきっかけとなった「積極性」の獲得に自身の経験を重ねて勇気をもらうこともあり得ますし、自分もカブで日本一周したいと夢見ている人にとっては、その実現の後押しにもなり得るでしょう。

この方がキレイな女性で知名度もあるから本書に書かれているような出来事が起こった、とも言えないこともないのですが、だからと言って自分のような無名のただのおっさんが同じことをして、誰からも相手にされないかと言うと、そうとは限らないわけです。

見向きもされない可能性は限りなく大きい、ということは言えますけどね。

でもそう言ったことは行動目標からみたら瑣末なことで、本書から私が得たものというのは、とにかく挑戦することで自分の内面が大きく変わるということ。

ご本人は気づいていないかもしれませんが、多くの人の助けがあったとは言え基本一人で問題を乗り越える必要があるプロセスを長期間続け、そして当初目標を達成したその経験が、これからの著者の人生を豊かにすることは間違いないはずです。

そんな体験、その後の豊かな人生(豊かさは人それぞれですが)を送りたい、というかそもそもバイクというかカブが好きだから乗り回したい私は、この方の本を読んで本当に良かったと思えるのです。

まさに代理体験を提供してくれ、自分が本当に挑戦するときのシミュレーションにもなっている、そして貴重な旅のデータまで教えてくれている。

これからカブで(カブに限らず、ですが)日本一周もしくはなんらかの挑戦を考えている方にとっては、大いに参考になり、そして勇気をもらえる一冊であることは間違いないでしょう。