最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 溝口徹 著

最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 (光文社新書)

人体の本来の機能を取り戻す食事

この本は人体が正常に機能するめに必要とされる栄養素を至適量摂取することによって、健康を取り戻そうとする「オーソモレキュラー」療法について書かれた本です。

オーソモレキュラー(Orthomolecular)とは「ortho-[整える]+molecule[分子]」という造語で、ビタミンCの大量摂取によって風邪を治す方法を提唱したライナス・ポーリング博士によって初めて使われた言葉です。

ポーリング博士も著書でも、体が抱えている様々な負担や物質の欠乏状態を改善し、体が持つ本来の機能を引き出すことで病気や不調を改善していく方法が説明されています。

本書で説明されているオーソモレキュラーでも、体が抱えている負担(主に栄養素の欠乏による連鎖的な反応)を栄養補給によって改善し、体が持つ本来の機能を発揮できるような状態にしていく、ということを目指しています。

読んでみると、当たり前だよって思いがちな内容ではあるのですが、今の私たちの食生活は糖質過多の食事になるような基準が作られていたり、外食時のメニューも糖質(米、パン、パスタなど)が主食となっています。

そのため糖質そのものの取りすぎによる不調、そして糖質によってカロリーの6割以上が摂取されているため、重要な栄養素である脂質やタンパク質が常に不足してしまうという現状もあります。

これまで異常なしとされていたが感覚的な不調とされるものや未病のようなものも、オーソモレキュラー的な視点から血液検査の結果を眺めたら、慢性的に不足している栄養素が見つかるかもしれません。

そして糖質中心になりがちな現代の食事内容を見直し、タンパク質や脂質(役割の違う脂質がかなりある)を自分の体に必要なものを必要な量だけ摂るように変えていくことで、あらゆる不調が治ってしまうというのがこの療法。

本当かよ、って思いますが、少なくとも私の場合は糖質を極力減らし(1日50g未満)、タンパク質を1食あたり30g程度、そして1日に130g(完食でプロテイン等を飲みます)程度摂るようにしたら、風邪を引かず花粉症も起こらず、白髪が減ったという変化がありました。

もしかしたら自分の気持ちの持ちようや、他の要素(筋トレをしたとか、ストレスが減ったとか)もあるかもしれませんが、自分はこのような変化が起きてきました。

自分の体は食べたものでできている、という自覚を持つ

当然ですが、自分の体はこれまで食べてきたものを材料として作られています。

すると脳も自分の食べたものでできており、食べたもので動いています。

この本で触れていた症例に、統合失調症や発達障害の方がオーソモレキュラー療法を実践して改善したと言うものが載っていました。

食べたものが精神にまで影響するのかと驚いてしまいそうですが、精神を司るのは主に脳ですし、その脳は食べたものでできているのだから当然のこととして必要な物質が不足すれば機能不全が起こってきます。

オーソモレキュラーとの関連は不明ですが、発達障害のお子さんは腸内環境が悪いことが多く、糖質制限を行うと症状が改善するということもよく聞きます。

これもオーソモレキュラーの観点からしたら、糖質による血糖値の乱高下や小麦や乳製品などによる腸壁の荒れによって、情緒が不安定になったという繋がりが理解できてきます。

私自身、体感的に糖質制限を行っている時には疲れにくい上に、気分も安定した落ち着いた精神状態でいられているという感覚があります。

それに付き合いで糖質を含むもの(ケーキやお菓子など)を食べた後には、激しい脱力感やもっと甘いものを食べたいという底無しの欲求が生まれてきたりと、明らかに糖質による変化が実感できています。

この自分の体験と本書の知識から、食べるものは体にかなりの影響を及ぼしており、そしてそれは精神面へもかなり大きな影響があるのだという意識を持つことができました。

人体の潜在能力を引き出す

人類をはじめとする現在存在するあらゆる生命は、これまでの環境の変化に耐え抜いてきた最強生物と言うことができます。

ということは、様々な環境下でも生き残るための方法を身につけているともいえます。

特に飢餓については、人類の永遠のテーマとも言える問題でした(故に現在の飽食が害になってしまいます)。

それら過酷な状況というのは、人体にとっては乗り越えることができるものではありますが、確かなストレス、ダメージとして蓄積されていきます。

そのダメージを受け止めるために、余裕のあるところから不足のある部分へと身体能力の一部が割かれていき、常にアンバランスな状態で運用されることになります。

短期間であればそれは適度なストレスとして、人体が活性化するきっかけになるかもしれません(厳しいトレーニングなどのように)。

しかしそれがずっと続く、もはや当たり前の環境になってしまうと、なんとか堪えていた体の方も負担が蓄積し、結果的になんらかの不調を訴え始めます。

そうなったときに初めて私たちは対策を取ろうと受診したりします。

オーソモレキュラーを医療として活用しようとする本書では、この状態をスタート地点として、血液検査や問診などから必要な栄養素を突き止めて補給します。

しかし、まだそこまで不調が感じられないが、なんだか疲れやすいとか風邪を引きやすいなどといった状態の時から、本書のような視点を持っていれば、自分の力で、しかも食事という毎日の習慣の中から改善することも可能となります。

ライザップやカイロプラクティックの視点とも重なる

ライザップでこの本を教わる

ライザップといえば「結果にコミットする」ダイエットとして有名ですが、実際に受けてみて感じたのは、ダイエットによる体重減少よりも全身の筋肉が活性化して引き締まったという方が強い印象でした。

結果は体重約-7kgに対し筋肉量は-2kgに抑えられ、脂肪の減少量は-5kgでした。

トレーニングを終えてみての実感としては体が非常に軽くなっており、生活も活発に、身軽に動けるようになっています。

ライザップ中の食事では糖質を極力減らし、タンパク質と脂質を中心にカロリーを摂取するよう指導され、週2回の筋力限界ギリギリ超えた負荷のトレーニングも行いました。

体重は糖質制限だけでもストンと落ちるのですが、それだと脂肪より先に筋肉が減ってしまい、一旦痩せても太りやすい身体になってしまうというのです。

そこでタンパク質を摂取しつつ負荷の強いトレーニングを継続、そして脂肪として蓄積しにくい脂質をエネルギー源にして生活をしていきます。

糖質は筋肉量を増やすときには重要になるのですが、筋肉の増大とともに脂肪としても蓄積されてしまうのでダイエットして筋肉を増やしたいと思っても、まずは断糖・高タンパク食をしながらトレーニングで筋肉量低下を防ぐのだそうです。

ライザップでの指導を受ける中で、なぜこういう食事がいいのか、そしてなぜあとで糖質を取らねばいけないのか、などいろいろ疑問が出てきます。

ライザップ中はトレーナーに質問し放題なのですが、指導期間を終わってしまうと質問もできなくなってしまいます。

そこで今後も自分で体をコントロールできるような知識が整理された本を教えて欲しいというお願いに対して、本書を教えてもらったのでした。

ライザップでの極限にまで追い込むトレーニングを終えた後に読むからこそ、書いてある様々な事柄が実感を持って理解できるようになっていました。

その上で現代の日本人に足りないのは、たんぱく質と脂質。そして糖質が多すぎる。

これだけは確実に言えるでしょう。

カイロプラクティクでも同じような栄養指導があった

私はかつて椎間板ヘルニアにかかり、カイロプラクティックの施術を受けていました。

これはアメリカで生まれ、骨格のバランスを整え、体が正常に機能するように栄養と休養を摂ることを勧めるものでした。

一般的に整体などと同一視されがちなカイロプラクティックですが、その施術自体はほんの一部の矯正だけで、大部分は自分の生活習慣を見直し、運動・栄養・休養をしっかり正しい方法で摂るということになります。

そして赤身の肉を積極的に摂るように指導されました。

椎間板ヘルニアになったとき、慢性的な腰痛や肩こりなどの症状もあり、20代前半だというのに要介護状態の高齢者のような身体の動きをしていました。

あきらかに筋肉が弱っているというか少ないから腰や関節に負担がかかっていました。

それに季節の変わり目ごとに風邪を引き、そして春と秋には花粉症に苦しみました。

今となってはタンパク質が重要で、それが不足していることを発端としていろいろな不調が現れていたのだとわかりますが、当時はそういった知識もなく、なんとなく赤身を食べるようにしていただけでした。

結果的には体も少しずつ改善していったのですが。

そんなただなんとなく指導を受けていた時のことを思い出すと、タンパク質を摂るような食事内容を指示されていましたし、筋肉を維持するための運動を続けるようにも結構しつこく言われていました。

今、この本を読んだあとに思い返してみると、それらはこの本にあるような「必要な栄養を至適量」摂取するような指示だったのだと理解することができました。

人は結局死ぬんですが…

人体が必要とする栄養の量と種類は、個人の置かれている状況や体質などによって大きく異なるといいます。

至適量の栄養を継続してとり続け、体が改善したとしてもいつかは死んでしまいます。

だからと言ってオーソモレキュラーが無駄かというとそんなことはなくて、本書でも言及しているがん患者に対しても、全身状態が良好になればがん細胞を休眠状態のようにもでき得るし、そのため余命以上に、かつQOLも良好に天寿を全うできうるといいます。

医療が発達して病巣を取り除いたり薬剤で死滅させる方法次々に開発されて、人々の寿命がどんどん伸びてきています。

しかし生きてはいるけど何もできないほど体調が辛い、というのでは生きていること自体が苦痛にもなりかねません。

そんな時に、本書のような思想、オーソモレキュラーによる人体の潜在的能力とも言える本来の機能を引き出してあげることで、自分の残された時間を豊かに生き切ることができるようになるのではとも思います。

もちろんまだまだ死を意識すらしない世代にとっても、人生を豊かにするためにも体が正常に動くようオーソモレキュラー的な食事を実践することは有意義でしょう。

いろいろな身体症状、そこから派生する精神状態に対して、食べ物という毎日摂取し続ける身近なものから改善でき、自分らしい人生を歩むことができるこの方法は、もっと多くの人に認知され、常識となるくらいに広まって欲しい内容でした。