夢を売る男 百田尚樹 著

夢を売る男 百田尚樹 著

夢を買った人たちの物語

アマゾンの内容紹介に載っている内容紹介ですが

輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は「いつもの提案」を持ちかける。「現代では、夢を見るには金がいるんだ」。牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。現代人のいびつな欲望を抉り出す、笑いと涙の傑作長編。

-amazon「内容紹介」より引用-

世の物書きを目指す人々が思う、「自分の作品は素晴らしい」と言う、一種の妄想と言うか
思い込みにつけ込み、ビジネスを展開すると言うお話です。
夢を見るにはお金がかかる。

そのお金は決して安くはないが、言わば「夢を買った人たち」は真実を知らされる事なく、
出版したんだと言う自負を持って生きていける。当人たちはある種満足感を持って生きて
行けると言う、なんか世の中のいびつさを感じさせる内容でした。

仕事って、結局この本の中で行われている仕組みでお金を得ているようなものだと、
冷めた目で現実を見てしまいそうな読後感。

著者の経歴

1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。放送作家として人気番組「探偵!ナイトスクープ」など多数を構成。2006年、特攻隊の零戦乗りを描いた『永遠 の0(ゼロ)』で作家デビュー。高校ボクシングの世界を舞台にした青春小説『ボックス!』が圧倒的な支持を集め、2010年、映画公開。

-amazonより引用-

こういう面白くて引き込まれる小説を書く人って、取材の綿密さもさることながら、
地頭の良さのような、何か高次元の能力を持っているような印象を受けます。

同志社大学に入ったのに中退。
規定の学習課程には収まらないぞ、と言うクリエイティビティの発露か何かなのか。
創造的な有名人って大学中退が多いような気がします。ちゃんと調べてませんが。

大人にも夢を見させてくれる小説

出版社の編集者が主人公のお話。

この小説のお話は、出版したがっている人に自費出版を促し、そのお金を会社の売上に
してしまうと言う、一見すると詐欺みたいな商売のお話。

そんなの引っかかるわけないじゃんか、と思いそうですがそうでもないんですな。
ここは作家さんの表現力の賜物でしょう。

本を出したいと思っている人、世の中には結構いるんでしょうか。
物書きを志したことがあったり、少しでもそう言った志向があったりすると
さらに面白く読める小説じゃないかと思います。

とても売れるわけがないようなヒドイ作品を自費出版させることによって、
会社が儲けていくという、なんとも言えない歯がゆさがたまらない作品。

この本をオススメしたい人

営業とか自分を売り込もうとする人に対して、オススメです。

この本、単純に小説としてとtも面白く楽しめるんですが、
主人公の編集者が出版希望者に対して自費出版を持ちかける時のトークが
とても秀逸なのです。

営業の天才というか、思わず相手の思い通りに踊らされるような、絶妙な
トークが目を引きます。

作中でも言及していますが、お客さんに対して

「幸福感」と「満足感」を提供しているからこそ、お金が取れる

という部分に思わず震えました。
確かにそりゃそうだけど、なんか腑に落ちない。
情報弱者が知らないうちに搾取される構造を見たような気持ちです。

情報をたくさん持っていると、交渉ごとにも有利になりますし。
他人の言うことを鵜呑みにせず、自分からも情報収集したり、自分の頭で考えて判断する
習慣を身に付けたいですね

この本から得られること

アコギな商売をしている出版社が、言葉巧みに出版希望者から大金を巻き上げる。
その過程で交わされる営業トーク、営業スキル。

この営業に関するプロセスは、日々営業活動に邁進している社畜諸氏にも、
大変有意義な事例となり得るでしょう。

相手に一切の不信感を抱かせず、こちらを完全に信用してくれるように
誘導するテクニックは圧巻です。

書評まとめ

非常に面白いです。大人向けのしっとり湿った面白さが満載です。

百田尚樹と言う作家のツイッターフォローしているとその人となりがわかりますが、
それを踏まえて読むとなお楽しめると思います。
ああ、百田さんだもんなあ、と言う感じ。

書評追記

本文内でも触れられてますが、
ネット上の話者に対する使用言語の比率は日本語がとても多いんだそうです。

世界の70分の1の人口なのに(1.4%)、日本語使用率は3.4%。
参照元:インターネットで使われている言語の普及率をグラフ化してみる(2016年)(最新)

このことから、日本語で発信する人が非常に多いのであろうことが予想できます。
一方で、日本人は本を読まない国民ですが、本を出したがる人は多い。

そして出版業界は本が売れないから、新刊をドンドン出す。
多品種少量生産で、一定の読者にたくさん売ると言う戦略ですね。
すると出版物の質がドンドン低下してつまらなくなるので、さらに読者が減る。

そうした中、競争が尚も激化する出版業界で、勇気を持って出版すると言うのは
大変なことだという印象を受けます。

それでもなお、自分の作品は絶対に売れるんだ!と言う信念を持って売り込みに来る
作家志望の登場人物たち。

日本の出版界の厳しさを基礎知識として知った上で、彼らの言動を追っていくと、
また違った視点からも楽しめるんじゃないかと思います。