日本一メルセデス・ベンツを売る男 前島太一 著

日本一メルセデス・ベンツを売る男 前島太一 著

驚異的な実績を持つ営業マンの一つの事例

本書はメルセデス・ベンツを売るセールスマンについて追いかけて、その営業スタイルや
方法論を明らかにしようとした本です。

営業という仕事は、ある程度の基本的な方法論のようなものはありますが、売り手と書い手の
双方が好みや得意な事などの個性が異なる存在のため、絶対的な一律の勝ちパターンといった
法則のようなものが確率しにくい仕事でもあります。

だからこそ営業という仕事は時に、その成果と連動した報酬体系であることが多く、またその
報酬体系が営業スキルを高めるモチベーションにも繋がっていきます。

本書はそんな営業職のスタイルについて、高額商材である自動車の中でも高級車の代名詞で
あるメルセデス・ベンツを年間160台も売るという圧倒的な実績を持つ人物を例として、その
営業スタイルを明らかにします。

本書の内容 −営業の基本を強力に実践-

本書はそのタイトル通り、メルセデス・ベンツのセールスマンを題材にした営業の本です。

何かのスキルを身につける時、非常に熟達した先人に学ぶことが多いはずです。
営業というスキルにあってもそれは同様で、本書でも「吉田満」という人物にイタビューし、
実践している営業手法について説明を受けています。

よって、読み手の力量によってその受け止めるものは異なってくるでしょう。

特にすでに営業職として現場に出て、一定の経験を積んでいればなお吸収するものも多く、
さらには本書で扱う自動車のような有形商材を扱う営業職であれば、より実践しやすいはず。

とは言えどんなに優れた営業マンでも基本に忠実であることはほぼ間違いありません。
本書で触れる内容も基本的なことを、特に強力に実行しているにすぎません。

そのため「そんなの当たり前」と思って意識に入ってこないこともありえます。

本を読むことの効果を最大限に引き出すためにも、まっさらな心で、この人はこんな方法で
顧客の心に寄り添って行くんだ!などといちいち感動しながら読むのがオススメです。

顧客に興味・関心を持つこと

本書における営業手法では、とにかく顧客主体の考え方を実行しており、顧客か要望を伝える
時にはすでにその内容を予測して対策を済ませているくらいのことをしています。

これは長年同じような商材を扱い、客層やその人々が求めるものがある程度掴めていること、
そして吉田氏が顧客に対して強い興味を持っていることがポイントです。

顧客に興味を持つ、といっても無理矢理に関心を持つことはせずに、最初の商談の時点で、
気持ちよく買ってくれるか、感謝の気持ちを持てる人か、などのチェックをしているとの事。

例としては、レストランなどで水を持ってきてくれた等の些細なことでも感謝が出来るか、と
いうようなことを見ているといいます。

そんな小さなことでも「当たり前」と受け取らず、いちいち感謝出来るような心を持つ人が
顧客であれば、私でもその人に興味というか好意すら持つでしょう。

そのため吉田氏も、そのような「顧客が喜ぶこと」を常に考えて実践できるのだと言えます。

売れる営業マンだから顧客が選べる、という点もあるのでしょうが、顧客選びの時点から既に
売り上げにつながるような思考が働いていることに驚きです。

顧客からの信頼を得ること

これまた営業マンとしては当たり前の基本事項とも言えることですが、この信頼を得るという
のがどれほど難しいか、営業経験者の方には分かって頂けるのではないでしょうか。

基本的には発注や相談などの受けた仕事を確実に高品質で素早く仕上げる、ということの積み
重ねになりますが、吉田氏のやり方も大きな違いはありません。

ただし彼のすごいところは、他の営業マンと差別化を図るところです。
彼は例えば納車まで4日で済ませる(詳細は本文をご覧ください)ことや、顧客へ必要書類の
提出を急がせるためにせっつくことまでしています。

それは最初の商談の時点で、前項のような見極めを行い、既にその顧客のために全力で役に立
ちたいという思いが全身から溢れているからこそ可能になるものです。

しかしこうした心構えや実際の行動を示された顧客としては、目の前の営業マンを信頼したく
なるはずです。

基本に忠実すぎて斬新さがあまり感じられませんが、基本のことを守るだけで成果が上がると
いうことは、つまり大部分の営業マンができていないということです。

そういう意味で彼が基本を徹底しているというのは、一つの強みであると言えるでしょう。

自分の扱う商材が好きであること

本書で取り上げている営業マンの吉田氏は、メルセデス・ベンツの車を売っています。
彼ほどの実績をあげていれば、例えば保険を売る仕事に転職したら、もしかしたらさらに高い
報酬を手にすることも可能です。

しかし彼はそういったヘッドハンティングを全て断っており、メルセデス・ベンツを売ることに
こだわっています。
それは彼自身もメルセデス・ベンツが好きで、いつまでも語れるほどだからだといいます。

本書の中でも吉田氏が、トップセールスマンとして招待されたメルセデス・ベンツの本社での
エピソードが記載されています。

メルセデス・ベンツは「最善か無か」という思想のもとに、一つ一つのものにキチンと理由が
あるといいます。

物作りに対する厳然とした姿勢、そして最高品質の商品といった、売るには申し分ない商品で
ある上に、世界で初めて自動車を完成させた歴史もあります。

そんな長く続く歴史の中で仕事をさせてもらっているという思いが、彼をメルセデス・ベンツを
売り続けるモチベーションに繋がっているということです。

自分の好きなものを情熱的に売る、というのは、売る側も楽しく充実しますし、買い手も安心
して購入することができます。
まさに三方よしの理想とすべき営業マンの姿ですね。

まとめ、感想

このように、数ある営業に関する本でもきっと触れられているであろう基本的な内容が、
本書の大部分を占めるものとなります。

ただし本書の例が他と違って輝くのは、吉田滿という人物が、心の底からこの仕事に熱中し、
顧客へとの共感を積み上げてきた結果として、圧倒的な成果を出しているということです。

姑息な小手先のテクニックではなく、熱い想いとも言えるような顧客や商品、ブランドへの
愛を持って、真摯に仕事に向かっているという姿勢が、この本の読み手にも伝わってきます。

この本から学ぶべきものは、吉田氏が実践するテクニックなどもありますが、それよりも大切
なのは、そういった個々のテクニックを生み出すに至ったマインドを学び取ることだと、
私は強く感じる読後感を得ました。

世の中に数ある営業スキルの本の中でも、そのような形の営業スキル本もあるでしょう。

色々なタイプの営業マンのやり方を学んで、まずは模倣してみて、そして自分に合った営業の
スタイルを確立していくことが成果を出すための王道であり近道であると言えます。

遠く果てしないようで、地道にコツコツと自分を高めていく。
営業という仕事は、自分磨きが成果につながる、とても尊い仕事だと思います。