奇跡のバナナ 田中節三 著

奇跡のバナナ 田中節三 著

日本でも育つバナナを生み出した

この本の著者、田中節三氏が長年の研究の末に編み出した「凍結解凍覚醒法」によって、
南国でしか育たないはずのバナナ、しかもすでに絶滅したとも言われるかつての品種である
グロス・ミッチェル種を日本でも収穫できるようにした、その過程を紹介する本。

厳密に言うと品種改良でもなく遺伝子操作でもない、その種が持つ潜在能力を引き出す方法で
バナナだけでなくパパイヤでも従来の形とは大幅に異なる個体を作り出したと言います。

著者の田中氏がおそらくぶっ飛んだ発明家タイプのような方なので、すんなりと理解する事が
難しいかもしれません。

ただし実際に田中氏が生み出したバナナが「奇跡のバナナ」(岡山では「もんげーバナナ」)
として売られているとのこと。

この技術は寒冷地でも植物が育つように、その植物が氷河期を乗り越えた時に使っていた能力
を引き出すことで耐寒性を高めるもの。
今後の展開としてシベリアを一大農地へと転換する…と言う壮大な計画もあるそうな。

実現したらとんでもないことになりますね。
そしてこの技術を応用したら国内の農業もさらに付加価値が増して、儲かる産業になるかも?

バナナ好きなら一度は憧れる「グロスミッチェル種」。

1950年代に流行した「パナマ病」と言う病気(カビ)により全滅したグロスミッチェル種。
バナナといえばこの種、と言われたグロスミッチェル種は全滅し、現在流通している品種は、
キャベンディッシュ種に一新されています。

一部、生き残りのグロスミッチェルが稀に、かなり高額で取引されているようです。

本書のバナナもグロスミッチェル、しかも著者が編み出した「凍結解凍覚醒法」で、さらに
甘みが増して、皮ごと食べられるようになっています。

グロスミッチェルそのものが”高級品”だった頃のバナナですから、そのままで今のバナナより
かなり美味しいとされます。

そして「凍結解凍覚醒法」で耐寒性を獲得したバナナは、さらに美味しくなっているといい
ますから、その美味しさはもうとんでもないレベル…と期待が膨らみます。

↑鹿児島県産「神バナナ」

↑岡山県産「おかやまバナナ」

Amazonで検索すると、いくつかべらぼうに高額なバナナが見つかります。
そのうち「凍結解凍覚醒法」 で作られているのが、【皮まで食べられる】と謳っているもの。

日本で流通しているバナナの99%以上が外国産(フィリピン産やエクアドル産が多い)で、
例のパナマ病(現在のバナナも絶滅の危機に瀕している)や他の害虫を防ぐために大量の農薬を使用しており、皮は食べられません。
※バナナは株分け(クローンのようなもの)で増えるため、一つの病気で全滅します。

大量に流通しているバナナは「キャベンディッシュ種」であり、皮も食べられなくはないです
が、厚くて繊維質が目立って食べられたものでは無いようです。
なお、Amazonで注文しても果実の成熟加減によって出荷日が遅れることがあるようです。

まだまだ生産量が少ないので、常に食べられる状態のバナナがあるわけでは無い、というのが
また余計に食べたくなる気持ちを掻き立てます。

著者について

田中節三(たなか・せつぞう)

1949年、岡山県生まれ。
農業法人株式会社「D&Tファーム」取締役技術責任者。中学卒業後、古紙回収・中古船販売業などで成功を収める。植物栽培が趣味であったことから、バナナの栽培法を研究。40年以上という年月をかけて「凍結解凍覚醒法」を開発し、冬は氷点下を記録する岡山県で、日本産バナナを栽培することに初めて成功。その技術が、国内外から大きな注目を集めている。

本書後半で著者自身の半生について少し言及していますが、小中学校にはほとんど行かずに、
自分が興味を持ったことについてはとことん調べてしまうという性質があると言っています。

また逆に人から何かを教わるのが非常に苦手であり、そのため小学校を三日坊主で行かなく
なってしまったといいます。破天荒過ぎます。

さらには興味を持って見たものは、写真のように覚えていられるとも言っており、多くの凡人
とはものの見方がそもそも違うようです。

結局世の中を変えてしまうほどの技術を生み出すのは、こうした枠にはまらない人なんだな、
という思いも強くなった本でした。

読後感、感想など

この本、読む前には品種改良とかハウス栽培の最新技術などの、従来のバナナをなんとか工夫
して岡山で作りました、的なものを予想していました。
私もバナナが好きで、あわよくば自宅で栽培できたらいいなと思って読みました。

ところがこの本のバナナは、現在流通しているキャベンディッシュではなく、すでにほぼ絶滅
したと言われるグロスミッチェルだという。

しかも品種改良や遺伝子操作、育成環境の改善ではなく、バナナそのものの眠っているDNAを
覚醒させて耐寒性を持たせているというところに、始めは「?」がたくさんでした。

理屈としては地球上のあらゆる生物は氷河期を生き抜いてきたから今あるわけですが、ならば
あらゆる生き物、植物は寒いところでも生きていけるはずだ、という発想にたどり着くのが、
やはり”天才性”というかその他大勢の人との違いなのかなと思います。

そして出来るはずだ、という確信というか出来る前提で40年も粘って研究し続けたという、
凄まじいまでの継続性も、凡人には到底叶わないところでしょう。

普通に考えて、熱帯の植物であるバナナがバナナにとっては寒冷な日本で育つわけない。

一部、温泉や地熱を使って熱帯の気候を再現している場所はありますが、バナナが寒さに耐え
生育するケースなんて考えれらなかったのです。

ところが著者は日本でバナナを収穫し販売するまでをやってのけた。
しかも日本を始め世界中の農業を変えてしまう可能性を秘めた技術で、です(儲かりそう)。

農業への興味があまり強くないせいか、この技術が広まりつつあることも知りませんでした。
本書や公式ホームページによれば、かなりメディア露出も増えているようです。
早くスーパーでも気軽に買えるくらいポピュラーな存在になってほしいものです。

なお、このバナナを生産するビジネスは、1株3万円で購入してそこから収穫されたバナナを
30万円で買い取る契約をするそうです。
1ヘクタールから購入でき、6000万円からこのバナナの栽培に参入可能です。

バナナが確実に収穫で切るよう環境を整えられれば…すごいことになりそうです。