新装版 漢方医学 大塚敬節 著

新装版 漢方医学  大塚敬節 著

日本における漢方医学の大家が書いた入門書

日本漢方の第一人者である大塚敬節氏が書いた漢方入門本。
昭和30年代に漢方ブームが起こった時に、そういう世相に合わせた書かれたそうです。
かなり昔に出版された(初版は1956年刊。本書は73年刊増補改訂の新装版)本であり、
2001年の復刊にあたり著者の息子さんが序文を書いています。

復刊された版で新装版とはいえ、すでに出版されてから19年。

それでもまだ売れていて中古でなく新刊で買えるということは、この本の支持者が一定数
存在しているということ。時の経過の試練にも残っている名著と言えます。

著者について

大塚/敬節
1900年(明治33)、高知市に生まれる。1923年、熊本医専卒。同年、湯本求真に師事して漢方医学を学ぶ。1931年より漢方専門にて開業。以来、漢方復興の先駆的活動をつづけ、1950年、同志と共に日本東洋医学会を創立、同学会理事・評議員・会長・理事長等を歴任。また1974年、社団法人北里研究所附属東洋医学総合研究所設立と共に初代所長に就任、1978年からは財団法人日本漢方医学研究所理事長を兼任し、名実ともに今日における漢方興隆の基礎を築いた。その功績により1978年、日本医師会最高有功賞を受賞。1980年10月15日死去。

-amazon「著者略歴」より引用-

経歴からも東洋医学の専門家であり、日本においてその普及に務めた第一人者であることも
感じられます。
本書が初版から時を超えて支持され続けているのにも納得できます。

本書の内容

内容紹介
漢方の歴史から治療方にいたるまで、
斯学の権威がわかりやすく解き明かした入門書

「東洋医学の目標は、どのようにすれば自然にとけ入って、
自然とともに生きることができるか、その法則を究めることにある」との達見のもと、
日本東洋医学会を創設し、漢方の第一人者として今日における興隆の基礎を築いた
先師による漢方理解のための必携書。
漢方の魅力、歴史、診断、薬方解説、病状別治療など、
漢方の要点を具体的に体系的に解き明かす。
漢方医学を理解しようとする人、専門家をめざそうとする人への平易で権威ある手引き。

-amazon「内容紹介」より引用-

専門分野への参入にあたり初学者向けた入門書というのは、大抵が「平易な表現」を心がけ、
などと書いてありますが、本書もそのようになっています。

ただし初学者向け入門書は、その道を極めたような方が書くパターンが多いので、平易な、と
言っても十分に素人には難しい言葉が並んでいます。本書も例に漏れずそうです。

特に1956年初版の本であり、今よりも出版のハードルが高かった時代の本であることを考慮
すると文章表現もカッチリしたものになります。

今、かなりの読書量をこなせる読書家であっても、本書を読んで理解していくのは骨が折れる
行程となります。それでもなお読み込んでいくことで、本書が言わんとしていることが徐々に
染み込んでくる、そういう歴史の重みも感じられる本です。

〔目次〕
漢方医学の魅力
漢方医学の変遷
漢方の診断
薬方解説
病状別治療
薬方集(五十音順)
薬物集(五十音順)

-本書「目次」より引用-

目次からも大体の内容が掴めるように、本書の内容としては「漢方の歴史」「中国漢方と日本漢方の違い」「漢方の診断」「実際の漢方薬」「病気から見た漢方薬」「具体的な漢方薬の調剤について」などの、漢方について大まかな全体像を概観できる構成です。

本書が特徴的なのは、著者自身の体の不調についても具体的な調合例のようなものが書かれて
いること。日本の漢方を今ば整理し直した方だからこそのエピソードです。

漢方薬の病気に対する姿勢や、対処療法が主の西洋薬との違いについても記述されており、
漢方では、症状が似たようなものでも、その人の体質や体調などの状態を診て処方を変えて
いくという点に、漢方こそ自己判断で使っては効き目がなさそうだという感想を抱きました。

風邪を引いたらとりあえず葛根湯を飲んで寝る、というのが果たして正しいことなのか。
基本的に葛根湯は血流をよくして体を温めて毒を出すような作用があるので、大きくハズレる
ことは無いようです。しかし体力を大幅に消耗している時には、身体が弱りすぎてしまって
逆効果になる…なんていうことにも思い至ります。

色々なレビューにも書かれていますが、実用書的な意味合いよりも、漢方医学とはどんな思想
に基づいて身体にアプローチするのか、という根本的な考え方をといた本になります。

漢方について素人の生兵法にならないようになのか、具体的な処方例などはあまり詳細では
ありません。

こうした事が、本書が漢方医学の入門書として長期間支持されている所以なのでしょう。

本書をオススメする人、必要ない人

本書は漢方医学についてしっかりと学び、体系的に身につけようとする人にとっては、
確固たる基礎づくりとして大いに役立つ本であると言えます。

技術系の入門書でもそうですが、ぼんやりした抽象的なことが多く含まれており、
その後の自学自習で間違った道に行かないように基礎固めをしてくれます。

本書はそう言った基礎固め的な要素を多分に含む本であり、実用書・ハンドブック的な
使い方では良さが引き出せないという印象です。

本書が必要ない人は、思想よりもとにかく症状と処方が対照的に検索できるような資料を
求めている人です。本書にも漢方薬と症状の索引がありますが、専門書として見るとかなり
数が少ないのでは、と思います。

素人が安易に手を出すものではないのでしょうが、もしもそうした手っ取り早く情報だけを
欲する場合には、そう言ったデータブック的なものを求めるのが良いと思われます。

書評まとめ

本書は入門書の例に漏れず、読み応えのある名著でした。
一通り読み終える頃には、漢方とはどんな考え方でどんな対処をするのか、という基本的な
骨格のようなものが理解できているように感じます。

ただしあくまで入門的な領域なので、具体的にこの症状にはこの薬だな、という判断は
当然ながらできません。

しかし自分で自分の体を普段からよく観察し、自分は普段はどういう性質なのか、
どうなったら調子が崩れて始めているのかと言った注意は敏感になっています。

東洋的なものの考え方はバランスを取ることが中心になりますが、まさに本書の通読を通じ、
身体が本来あるべき状態を保てるように、注意力が身についたような読後感です。

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