せどりの思考法 ~お宝商品は「違和感」で探せ  フジップリン著

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sedori no sikouhou 古本

sedori no sikouhou

せどりの思考法 〜お宝商品は「違和感」で探せ

「せどり」視点で見る商売の基本原則

本書は、店舗などで販売されている商品の中から転売して利益を得る、いわゆる「せどり」に関するノウハウをまとめた本です。

これからせどりを始めようと思う方へ向けて書かれているような印象を受けますが、すでにせどりを実践している方にも(やや物足りないかもしれませんが)、初心に返って自分を見直すきっかけにもなると思える本でした。

「違和感」を活用してせどりをするという視点は、現役せどらーにとっては暗黙のうちに実行しているかもしれませんが、それを言語化して再現性を持たせる意味でも一読の価値はあるように思えます。

 

著者について

本書の著者であるフジップリン氏は、ご自身でもせどりを実践して利益を得て、その経験の中から積み上げたノウハウを伝える講師として活躍されている方のようです。

現在では実績もあり、せどりスキルも折り紙付きと言える著者ですが、当然初めからうまくいったわけではありません。

YouTubeでご自身のチャンネルも開設されており、そこでもせどりを始めるきっかけやせどりのノウハウ、心構えなどをお話していいます。

せどりをご自身の事業として実践する背景には、一人の人間の切実な事情があったりするものです。

どんな人も何かしらの理由はあるのかもしれませんが、この方の場合はなんだかそれが非常にリアルに感じられ、まだせどりをはじめてもいない自分にも深く刺さったように感じました。

そんな親近感を覚えるような著者が、これからせどりを始めて利益を得て、それを維持発展させていくことを心から望んで書いた本が本書である。そんなふうに思える著者であり本であります。

 

「違和感」を感じて利益商品を察知する

さて本書の肝になる内容ですが、いわゆる違和感を活用して利益商品を見つけましょう、というものです。

言葉だけ聞くとなんだかセンスのようなものがなければ難しいのではないか、と思われるかもしれません。

確かに中身を知らずに「違和感」を察知せよ、なんて言われたらせどりセンスとでもいうような天性のものがないとできないのではなんて思いがちです。

しかしこうして本になり、他者へ伝達することができるノウハウとして確立しています。

この本を読めば、せどりにおける「違和感」を察知する能力が身に付くようになっています。

 

商品の「違和感」とは?

本書のいう商品の違和感とは、そのものズバリ売り場で浮いている状態のことを指します。

そしてそれを察知するには、商品の「置かれ方」「見た目」「値付け」「POP」などを注意深く観察し、利益商品である可能性を察知します。

店側が積極的に売たい商品ではなかったり、在庫過剰で安売りしてでも捌いてしまいたいという商品がこうした違和感を纏っていることが多いようです。

せどり自体が、需要と供給のバランスが崩れているところを狙う手法であるため、まさにこの着眼点は本質を得ているものと言えます。

ただしこの時に商品知識があるものだと「どうせ売れない」「需要が過剰だ」などという思い込みにより見逃してしまう危険性も指摘されています。

本書の方法が秀逸なのは、「商品知識」が無いほうが、利益商品を逃さず手に入れられるということであり、そのため自分の専門外の商品も扱うことができるということになります。

この専門知識に縛られない手法こそが、本書が他のせどりノウハウや類似本と一線を画する要因でもあります。

この本を読んで自分もせどりを始めてみよう、と思えた方はとてもラッキーですね。

 

ノウハウをいくら集めても…

ここからは本書の内容というよりはせどりの実践に関することを少々。

せどりに限らずですが、どんな副業ノウハウやお小遣い稼ぎに関してもノウハウだけを身につけて、それを実践しなければ何にもなりません。

また、新しいノウハウを手に入れてそれを試してみて、その段階で利益が出なければゴミノウハウだと切り捨ててしまう行為も同様です。

私が思うには、巷に溢れる膨大なノウハウ(副業に関するもの、仕事の進め方に関するものなど)は、どれも一定の成果があった実績があるからこそ本になったりしているわけです。

自分に合う合わないの相性もありますし、さらに習熟度の問題もあります。

また副業といってもそれを実践するための道具を揃えたりと、初期投資がかかることがあります。

こうした様々な参入障壁とも言える壁が存在するからこそ、すでに実践している人たちの利益が担保されているとも言えるのでしょう。

しかし、これからなにか副業など始めようと考えている方には、ぜひ初めの1ヶ月ほどは成果なしでも我慢してほしいと思っています。

そしてその我慢の期間を過ごすなら、そしてせどりに挑戦すると決めているのなら、本書の方法をまずはできるところから始めてみるのがおすすめである、とごく主観的な意見ではありますが主張させていただきます。

私自身もまだ利益は微々たるものですが、赤字は出さずに回転させるところまではきました。

そして始めてから3ヶ月かかりました。

1ヶ月程度では利益どころが赤字も垂れ流し状態です。

一方でなんとなくの肌感覚で、こうすればいいのかも…というものが掴めてきます。

でも利益が出るとは到底思えない状態です。

それでもなお、愚直に本に書いてある通りに行動し続けることで、自分なりのアレンジというか、自分流のノウハウ活用の形が身に付いてきます。

そこまでくれば、きっとあとは数をこなして仕入数自体を増やしていけば利益は比例して増えていく流れになっていきます。

だから初めたばかりの苦しい時期を、どうか本書を信じて乗り越えてみてください。

 

せどりの状況について

せどりで稼ぐ、と言っても闇雲に商品サーチすれば利益商品が見つかるとは限りません。

一昔前にはブックオフなど新古書店と言われる店舗によるせどりが流行し、店側がせどり禁止などの処置を行うほどでもありました。

本などの商品はサーチ自体が容易で、短時間で大量に調べることが可能であるということも古本せどりが流行った一因でしょう。

そんな古本せどりでは、せどらーが片っ端から本をサーチすることで一般客の買い物を妨害している(そんな意思はないにしても)ように見られ、せどり禁止となる店舗が出てきました。

さらに古本の価格が1冊100円やそれ以外は定価の半額という低い水準から、需要の高そうな本などは定価の2~3割引や低価格本も200円以上になるなど、利幅が激減する状況にも変化してきました。

そういった要因が重なり、今では古本せどりは稼げないといわれて久しい状況です。

比較的簡単にせどりができると言われていた古本であっても、そもそも全数検査をしないと利益商品が見つからないということになります。

そしてさらに現状では利益商品自体が激減しているため、全数検査をしたところで利益商品が見つからないこともザラにあります。

一方で本書のような「違和感」でまずは利益の出そうな商品群を見つけ、その限られた範囲内で徹底サーチする、という方法を実践することで労力の削減ができます。

そして一般的な目玉商品ではないものが多い「違和感」を纏った商品は、人気のない売り場にあることが多く、そこでサーチをしていても迷惑をかけにくいこともあります。

そしてせどりの対象を古本に限らない(家電や雑貨などなんでも対象になりうる)ことで、利幅の大きな商品分野を次々に開拓できる可能性がある、という強みがあります。

こうしたこともあって私自身は本書を読み終えた時、せどりはむしろ埋もれた商品を必要な人へ届けることができ、かつ儲けも得られる真っ当な商売ではないか、と思ったのです。

「転売ヤー」などと揶揄される人たちが目立つのでせどらー自体も肩身の狭い思いをしがちですが、どんな商売でも一部の目立つ存在で印象が悪化することはあります。

せどらーは楽をして稼いでいるなどと思われたりして、妬みの対象にもなりがちです。

しかしせどりの実態を知り、苦労に苦労を重ねて利益を生み出す行為を体験した後には、きっと誇りを持ってせどりを実践できるようになると私は思います。

そんなふうに思えるようになったのも、本書を読み、それを実践し、ごくわずかながら利益を生み出し始めているからなのです。

だから本書を書いてくれたフジップリン氏には大いに感謝するところです。

本当にありがとうございました。

 

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