レバレッジ・リーディング 本田直之 著

読書論

レバレッジ・リーディング 100倍の利益を稼ぎ出すビジネス書「多読」のすすめ 

本田直之 著

ビジネス書「多読」のすすめ

「レバレッジ〇〇」でおなじみの本田直之氏による「多読」を進める本です。

もう10年以上前の本ですが、Kindle unlimitedの対象になっているのでビジネスにおける読書
の”世俗的な”効能を知るにはうってつけの一冊です。

この本が出た2006年、私が本書を初めて読んだ時にはわかりませんでしたが、もしかしたら
本田直之氏は読書が苦手なのでは?と今回読んだ時には感じました。

読書が苦手だから、苦手なりにもたくさん読むこと、読書ではなく投資として実行することを
編み出したのかな?という印象です。

読書が苦手と言っても、そこから大きな収益を生み出せることが確実にわかっているなら、
苦手だと思うに間に読んでしまえ!というゴリゴリ系な感じがプンプンします。

 

読書嫌い向けに読書のハードルを超低くした本

おそらくですが著者の本田氏は読書というか本を読むのが苦手です。
少なくとも活字中毒ではないでしょう。

でなければ「本を読む目的を明確にし」「本の中で必要なところのみ情報を拾う」
「これはパレートの法則にも則っている」ということは書かないと思うからです。

確かに明確に必要な情報がわかっているビジネスに役立てるには、効率的な読み方でしょう。

しかしこの読み方では、未知の分野の勉強をするとか、好奇心のままに視野を広げる読書でも
効果を発揮するのは難しいでしょう。

目標を決めて必要な情報を収集するという意識づけでは、自分の知らない情報は認識すらする
ことができないからです(RAS:脳幹網様体賦活系)。

本書では、目標を決めてその情報に意識を向けることで、必要な情報が得られるといいます。
これはRASを積極的に活用しようと、欲しい情報にターゲットを決めて、その情報に対する
感度を上げようとするもの。

一方で私が思う読書とは自分の知らない世界を一歩先に体験するようなイメージですから、
自分の知らない世界を丸ごと切り捨てる読み方はやや承服しかねるところがありました。

 

本書が役立つ場面、活用したい場面

とは言え、かなりのビジネス上で結果を出している本田氏の著書ですし、もう初版から16年が
経過しています。

それでも未だ新刊で買えるということは売れ続けているということですから、やはり一定以上
の支持があるということです。

私自身もこの本の考え方に則って本を読み、新卒入社した会社では必要とされる知識をかなり
のハイペースで本を読みまくって身に付けることができました。
実家住まいだったせいもあり、手取り15万円のうち10万円くらいが本代に消えていました。

当時は本の重さで実家の床が抜けて、改修工事をする羽目になったくらい本が増えました。
そのくらい本を読むペースが上がり、それに比例してどんどん知識は増えていきました。

だから急いで身に付ける必要がある知識があり、それがかなり切迫しているような状態では、
とりあえず物事の大枠を掴んで自分に直接関係あること(だいたい2割くらい)を精読する、
という本書の方法は、とても効率的で効果的なのです。

そして本を読む習慣がなかった(とは言えマニアックな本は読んでいた)私が1日に数冊以上
本を読むようになったのも、この本の「最初から全部読む必要がない」という本読みにとって
はにわかには信じられない言葉によるところが大きかったです。

 

未知の分野の大枠を知るのにも役立つ

今でもこの本の読み方、考え方は、例えば未知の分野に対する理解をしたいと思った時など、
まずAmazonなどでその分野で検索をします。

そしていわゆる大元の本と思われる網羅的なものを買い、そして入門用、中堅者向け、特に
知る必要がある専門分野の本をそれぞれ2〜3冊ずつ購入し、レバレッジ・リーディングすると
いう使い方をしています。

こうした買い方ができない場合では、そのカテゴリランキングの1位〜10位をまとめて購入、
そしてレバレッジ・リーディングをして自分用のメモを作る方法で把握していきます。

だからこの本の方法が絶対的にあっているとか間違っているではなくて、時と場合によっては
使い分けていきましょう、というのが私の考えになります。

 

この本の”キモ”になる箇所

”読書の流れ”で紹介されているところで、

本を読む目的を明確化
読むところと読まないところの明確化

制限時間を設ける
本の内容次第だが、平均は1〜2時間程度

全体を俯瞰する
「まえがき」「目次」「あとがき」等をチェックし、本の全体像を頭に入れる

読書開始
緩急をつけて読む・・・重要なところは熟読、他は斜め読み
ポイントを押さえる・・・線や印、書き込み、ドッグイヤーなどのマーキング

このような流れが紹介されています。

この流れは、速読本や他の多読本、あるいは読書論を説く本ではほぼ共通して示されている、
目的を持って本から情報を検索する読み方です。
いわば「検索読書」の雛形とも言えるでしょう。

この読み方を絶対的読書方法だと信奉する人が多いのですが、この読み方のデメリットは、
自分の知らない知識が頭に入ってこないということです。

このことをしっかり肝に命じた上で検索読書法を実行しないと、いつまで経っても読書ばかり
している【知ったかぶり野郎】になってしまいます。

何を隠そう、私もしばらくはその状態でした。いわゆる【知識だけあるバカ】です。

 

本書は「速読否定派」

速読は高速で読書すること、という風に捉えられますが、ここでは速読は否定気味です。

速読をするにはある一定以上の訓練が必要とされることが多いですが、そうすると本書の
キモである「効率よく必要な情報を検索する」という行為に支障を来したり、速読を諦めた
人たちに本書が刺さらなくなるからだと思われます。

しかし本書に書かれている内容は、そのまま巷に溢れる「速読法」のやり方のままです。

いわゆる速読法は、自分の知っている知識(ストック)を使って、本を見ることで脳内の
ストックを引き出すことで認識を補完する方法で読んでいるつもりになっています。

ですから本書は速読を否定していますが、速読そのものです。

ただし速読といっても、速読技術そのものに注目した方法であることに注意です。
速読の本質とは、早く読めて、しかも内容がしっかりわかっているということです。

そして速読とは結局、技術的習熟が必須のスキルの一つですから、つまり読書体験が非常に
多く積み上がっていくほど早く読めるというだけの話です。

どん速』で有名な宇都出氏の本にも書いてありますが、速読技術を身に付けるということが
先行しすぎてしまって、本を読む回数が増えなくなっていることが、逆説的に速読自体が
できないことに繋がっているとも言えるのです。

ですから速読するという意識を持たずに本書の技法を使ってたくさん読書することで、まずは
速読達成に向けての「読書体験の積み上げ」が可能になるとも言えるでしょう。

その意味では本書は、意図せずとも速読のトレーニング本であるともいうことができます。
本書は速読本ではないと否定していますけどね。

何はともあれ、とにかく大量に読書することは間違いなく役に立つということです。

 

まとめ、感想

自分の知らないことがどれだけあるのか、その膨大な未知の領域を知ることが読書の醍醐味で
あるともいえます。

知識を得れば得るほど、自分の知らない世界がどんどん広がる。
まさにソクラテスの「無知の知」とも言える境地です。

そんな状態になるには、本書の読み方はあくまで入門者向けと心得て、急いで情報が欲しい時
に限って使う方法だと決めておくことです。

そうした知識を得て実践し、それでも上手く行かなかったなどという体験を通じて、色々な
読み方であったり、知識の応用の仕方を学んでいくのです。

本を読むのがどうも苦手だ…という人には、この「レバレッジ・リーディング」から始めると、
いつの間には読書大好き人間になっているかもしれませんよ!

 

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