ある達人読書家の読書論
”読書=(面倒臭そうな)すべきもの”から”楽しむもの”へ
収入アップや出世など、
自分の能力や知見を高めるために非常に有益と言われている読書。
中には読書が趣味であったり、極端な場合では読書自体が生きがいだなんて人もいる、
気合いを入れて取り組まなければならないような、奥の深そうな行為でもあります。
そんな敷居の高そうな読書ですから、
読書習慣のない人にとっては負担が大きいのです。
本を読む量が多いほど収入が高いとか、
本がたくさんある家庭の子どもは知能が高いなど、相関が曖昧な噂も絶えません。
しかし本を読むことで本当に効果があるなら、是非とも読みたい。
そう思いませんか?
本記事では、読書をすると人生が豊かになる
(=結果的に収入アップや知能向上が起こる)
という前提に立ち、読書を楽しむことができるようになる方法を示します。
松岡正剛著『多読術』の紹介を通じて、あなたに合った
「読書スタイル」を手に入れて、
ぜひとも「楽しめる読書」を実践してください。
読書は日本でどのくらいポピュラーなのか
本書についてのご紹介の前に、日本人の読書量について引用します。
日本人は本を読まなくなったと言われますけど、
そのソースが【文化庁「国語に関する世論調査」平成30年度】(※更新しました)で、
前回調査(平成25年度)から比較すると、確かに減ってそうな数字です。
それでも平成30年時点で、月に1冊以上読む人が半数くらい。
逆にたくさん読む(月7冊以上)は、3.6%から3.2%へ減っています。
月7冊ですと、4日に1冊のペースくらいでしょうか。
それくらいの読書量で日本人の上位3%ちょっとに入れるなら、
読書ってお手軽な成功法とも言えそうです。
本書の内容
そんな読書に関してあまり積極的でない日本の状況を踏まえた上で、
本書(達人読書家の読書スタイルの紹介本)をオススメしていきます。
本書の紹介 (amazonからの引用)では、
読書の楽しみを知れば、自然と本はたくさん読めます。著者、松岡正剛の読書遍歴を振り返り、日頃の読書の方法を紹介しながら、達人による多読のコツを伝授します。「棚から選書する方法」「読書する場所」「最初に読むべき頁」等々、そのコツは多岐にわたります。本書を読んで、あなたに適した読書スタイルを再発見してみてください。
-amazon「内容紹介」より引用-
上記紹介文でも言及しているように「読書の楽しみ」を知ることで、
勝手にどんどん本を読んでしまう生活になるんですね。
ここが日本で読書人口が減り続けている一番の理由と思うのです。
人生で本格的に本を読む機会って、大抵が小学校だったりします。
私自身もそうですが、小学校で本を読む時っていい思い出がありません。
みんなの前で音読したり(時に恥をかいたり)、
出題者の意思に沿った読解を求められたり。
不本意な読解というか、そもそも「読解」を求められることが不本意。
自由に楽しく読ませて欲しいんですけどね。
だから私も小学生当時は本をほとんど読みませんでした。
そんな読書の原体験を大量生産する日本にあって、
読書の楽しさや読書がもたらすものを紹介しているのが本書なのです。
著者について
松岡/正剛
1944年、京都府生まれ。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。科学から芸術におよぶ多様なジャンルに取り組み、その研究成果を著作・映像等として発表。独自の視点による情報文化論、日本文化論に定評がある。インターネット上で壮大なブックナビゲーション「千夜千冊」を展開中-amazon「著者略歴」より引用-
著者紹介には「科学から芸術に及ぶ多様なジャンルに取り組み」、とあります。
この方が編集長をかつて務められていた「工作舎」という出版社がありますが、
まさに「芸術と科学の境界線が曖昧な時代の視点」を提供してくれていました。
まだ学問領域が高度に発達していないからこその柔軟な視点とも言えますが、
高度な科学技術を扱う現在において、新たな着想を得るにはこうした多くの分野を
横断し得る視点の提供が生きてくるのではないでしょうか。
今よりも生きた人間の暮らしに近づけるというか、
自然が身近にあるような感覚を提供してくれます。
本書の概要
本書はよくある読書のハウツー本ではなく、本格的な読書論とも言えます。
読書の達人たる著者が、長年にわたり蓄積してきた読書に対する考え方を紹介し、
それを踏まえてどうやって本に対峙するのかを説いています。
本書は次のように章立てが組まれています。目次を引用すると
第一章 多読・少読・広読・狭読
第二章 多様性を育てていく
第三章 読書の方法を探る
第四章 読書することは編集すること
第五章 自分に合った読書スタイル
第六章 キーブックを選ぶ
第七章 読書の未来
読書をしたいのになかなか思うように進まない、積ん読がどんどん育つ。
そんな(私のような)人にとっては、読書が半ば義務のような感覚になってきます。
この本で提示されている読書方法は、著者の松岡氏が長年の読書生活で編み出してきた
目的別の方法や読書スタイルとも言える本と向き合う姿勢というものです。
そして全ての根底にあるのは「読書の楽しみ」を知ること。
読書を楽しむことさえできれば、
いくら積ん読の山が聳えようとも苦しい義務感はなく、
ワクワクしたこれから知る新しい世界への期待が高まることになるのです。
読書は著者・編集者、三者の対話である
読書とは著者と読者との対話であり、
その間を取り持つのが編者であるという主張です。
著者の主張をそのまま本として出版したのでは、おそらく「アク」が強すぎて
本来の意図が伝わりにくい恐れがあります。
しかし編者、編集者が間に入ることによって多くの人が読解可能な言葉に
翻訳したり、構成を工夫したりすることによって、
著者の声が多くの人に理解され得る形に編集されます。
結果として出版される頃にはこの三者によって、読書の味わいが完成されるのです。
いかに優れた主張であっても、読者が理解不能な文章では存在しないも同然です。
そこで編集者という存在が、著者の生の声を一般読者にも届く形に”翻訳”する。
こうした視点を持つと、読書という行為に関わった多くの人に思いを
馳せることができ、さらに深い読後感、満足感が得られるようになるでしょう。
書物と本棚はワンセット
「本棚はその人の頭の中を表現している」
これはまさに的を得た指摘です。
これまでに読んだ本が全て保管されているとは限りませんが、
少なくとも本棚に残してあるということは、その持ち主が手放すには惜しいと
思うからこそそこに存在している本であると言えます。
そして本棚の本の並び方も、意図する、しないに関わらず、
何らかの持ち主の意図が現れている、と考えられます。
ですから、自らの所有する本棚を定期的に見返すことで、
今、自分が関心のあることや集中的に知識を得ようとしていること、
考えていることが象徴的に認識できるツールであると言えます。
本書を読むことにより、
単なる読書法、ハウツー本ではなく「読書論」である、と言えるのは、
こうした本を読むことによって得られる背景にも言及しているためです。
本棚が持ち主の頭の中を象徴しているのならば、
逆転の発想として、頭の中を整理したい場合には、本棚を整理すれば良い、と
いうことにもなります。
事実、不要な知識やすでに役目を終えたなと思える本を処分すると、
思考がクリアになり、より発展的な思考やそのための書籍が新たに本棚を埋めます。
さすがは読書の達人たる著者が言うだけのことはある、と言う内容の本です。
この本をオススメしたい人
日頃から読書を習慣としている人に対しては、ご自身の知識を棚卸ししたり
自分の読書体験をもっと充実させたい場合に新たな知見が提供されます。
あまり読書をしないと言う人であっても、読書はその楽しみを知ることが重要、
と言う著者のメッセージが響くと思います。
初版から10年ほど経過している本ですが、読書家でもある著者が説く
読書の本質論は、今なお迷える乱読家に、読書生活の指針を指し示してくれています。
書評まとめ
本を読むことは、本来楽しいことです。
それは人間が根源的に持っている好奇心を満たす行為だからです。
誰もが興味のあること、好きなことについては好奇心をもち、
自然に情報収拾を行います。
それがたまたま本から得ているケースが多い、と言うのが読書家なのではと思います。
情報化社会と言われて久しい現在ですが、誰もが情報発信できる世の中になり、
その情報の質については玉石混交という現状があります。
情報リテラシーを身につけて、有用な情報とジャンクな情報を選別する力を
身に着ける為、信憑性の高い情報が多い「本」という媒体を活用するのも
一つの方法です。
体系的に知識が身に付く、最もお手軽なツールとも言えます。
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