GAFA 四騎士が創り変えた世界 スコット・ギャロウェイ著
新しい世界の形を可視化した本
今でこそ当たり前のようにGAFAという言葉が使われているが、本書が発行した
頃には、まだGAFAというような1つの概念としては存在していなかったように
思います。
本書の著者が提起した、新しく世界を作り変えてきた4つの企業である
Google、Apple、facebook、Amazonが、一体どのようにして世界を支配するまでに
なったのかを考察した本。とても興味深く読めます。
また、本書のような視点を持つことによって、今や生活の中で当たり前に存在している
GAFAについて、改めて特殊な存在であると捉え直して、自分が主体となって利用して
行けるような判断力を養うきっかけともなりうる本です。
著者について
スコット・ギャロウェイ (Scott Galloway)
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。
連続起業家(シリアル・アントレプレナー)としてL2、Red Envelope、Prophetなど9つの会社を起業。ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピュータなどの役員も歴任。
2012年、クレイトン・クリステンセン(『イノベーションのジレンマ』著者)、リンダ・グラットン(『ライフ・シフト』著者)らとともに「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出。
You Tubeで毎週公開している動画「Winners & Losers」は数百万回再生を誇るほか、TED「How Amazon, Apple, Facebook and Google manipulate our emotions(アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルはいかに人間の感情を操るのか)」は200万回以上閲覧された。
度会 圭子(わたらい けいこ)
翻訳家。上智大学文学部卒業。主な訳書に、ロバート・キンセル/マーニー・ペイヴァン『You Tube革命 メディアを変える挑戦者たち』、マイケル・ルイス『かくて行動経済学は生まれり』(以上、文藝春秋)、エーリッヒ・フロム『悪について』(ちくま学芸文庫)などがある。
-本書「著者・訳者紹介」より引用-
本書はニューヨーク大学スターン経営大学院の教授のスコット・ギャロウェイ氏が著者で、
MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教えているが、
これにも増してインパクトがあるのが9つの会社を企業し、かつ名だたる大企業の役員も経験
しているというところ。
日本で多いパターンの研究者としてではなく、実践者としてMBAコースで教鞭を取っている、
というところがアメリカの経営大学院らしく、本書の内容についても信憑性が担保される
要素だと言えそうです。
本書の内容について
本書カバーの折り返しに、下記のような文章が書かれています。
Google、Apple、facebook、amazon − GAFA
彼らはなぜこれほどの力を得たのか
彼らは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
彼らが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか
まさにこの、GAFAがどうやって今の地位に至ったのか、そしてGAFAはどのように世界を
支配して創り変えて行ったのか、そしてその創り変えられた世界で私たちはどのように
いきていけばいいのか。
こうした問いに答えていくのが本書の内容となります。
各章の構成
本書はGAFA(Google、Apple、facebook、amazon)について、それぞれの企業が
どのようなコンセプトを持ち、それを発展させて今に至るのかについての詳しい説明を
2章〜5章で記述していきます。
そしてGAFA4社に共通する特徴について考察し(6章〜8章)、GAFA後の世界での生き方に
ついての考察へと進んでいきます(8章〜11章)。
GAFAが四騎士となるまでの過程とそれぞれの特徴
本書序盤では、GAFAと呼ぶ世界を変えた四騎士についてのそれぞれの成り立ちなどが説明
されています。
GAFAはそれぞれ、
amazon→1兆ドルにもっとも近い巨人
Apple→ジョブズという教祖を崇める宗教
facebook→人類の1/4を繋げた怪物
Google→全知全能で無慈悲な神
という特徴を表す一文が添えられています。
これは目次に書かれている各章の見出しですが、言い得て妙というか、まさにそうした特徴を
備えている巨大企業である、という形容になっています。
GAFAに共通する特徴について
中盤の各章では、GAFAに共通する特徴についての考察がなされています。
四騎士は「ペテン師」から成り上がった
脳・心・性器を標的にする四騎士
四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
こちらも目次の見出しより引用していますが、GAFAに共通する要素として、
ペテン師からの成り上がり、脳・心・性器を標的にする、GAFAに共通する8つの特徴(覇権の
8遺伝子)が指摘されています。
これらの要素は、GAFAが巨大化して世界を支配するに至るまでに、著者が重要であると注目
した要素です。
特に「覇権の8つの遺伝子」とされている要素は、ここから1兆ドル企業になるためのルール、
本書では「Tアルゴリズム」と呼ぶものが生じてくるが、著者の会社L2では、これをより良い
資本配分のために利用しているとの事。
【四騎士に共通する8つの要素】
①商品の差別化
②ビジョンへの投資
③世界展開
④好感度
⑤垂直統合
⑥AI
⑦キャリアの箔付けになる
⑧地の利
著者によれは、これら「Tアルゴリズム」による分析は簡単だが、この分析に基づいた主張を
相手に聞かせる方が難しい(つまりTアルゴリズムの適用が難しい)との事。
皮肉っぽく書かれている部分ですが、これら8要素を簡単には実現できないからこそ、
GAFAがGAFAたる所以なのかもしれません。
GAFA以後の世界について
本書終盤では、GAFA以後の世界やその中でいかに生きていくかについて記述されています。
NEXT GAFA -第五の騎士は誰なのか
GAFA「以後」の世界で生きるための武器
少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
まず、GAFAに続くとみられる企業が何なのかを予測するために、先述の「Tアルゴリズム」を
「第五の騎士」候補の企業に当てはめていきます。
しかしこれら候補企業が未だ「4騎士」に名を連ねていない理由があり、それを克服しない
限りは第五の騎士とはなれないのだ、と指摘しています。
次いで、GAFA以後の世界で生きるために、という事で個人的な視点から、これからの世界で
生き抜くために有益と思われる要素が紹介されています。
例えば、「大学に行く」「資格・証明」「何かをなしとげた経験「都市に出る」など、今でも
経済的に有利に生きるために大切とされることが列挙されています。
時代が変わろうと評価される人物の要素は大きくは変わらないということでしょう。
MBAコースの教授が言いそうな、世界的一流企業(GAFAのような)で活躍するためには、
という視点が見え隠れする「生きるための武器」だなぁ、という印象です。
最終章では、「少数の支配者と多数の農奴が生きる世界」という見出しから、4騎士が絶対的
な存在として君臨する世界でも、4騎士が我々の生活の面倒を見てくれるわけではない、と
指摘します。
生活レベルを日々改善してくれるGAFAの4騎士ですが、これら企業は決して私たちのために
何かをしてくれるわけではなく、あくまでも利益を追求する集団であるということです。
私たちがいかに利用するか、ということを考えることも必要ですが、多くの人間がこれらの
組織に力を与えているということも同時に理解する必要があります。
結果的にGAFAが良いのか悪いのか、その判定はできません。
しかしこれらの巨大企業を絶えず理解しようとする姿勢は、とても重要なことであると、
著者は締めくくっています。
もはや私たちの生活になくてはならない存在となってしまったGAFA。
しかし彼らに依存しきることなく、完全に支配されてしまわぬように、常に個々の知識や
判断力を磨きつつ、GAFAそのものを理解しようと努めることが大切なのだ、と理解する
ことにしよう、と思うでした。
まとめ
『GAFA -四騎士が創り変えた世界』という、一見するとテーマが大きすぎで自分にはあまり
関係ないんじゃないか、と思ってしまうような本でした。
しかし思い返してみるまでもなく、毎日Googleで検索をし、amazonで本や日用品を買い、
AppleのMacでブログを書きiPhoneでコミュニケーションを取り、facebookで友人たちの
近況を知るという生活を行なっています。かなり生活に密着しているのです。
これら企業がもしも、世界を意のままに動かそうと思ったとしても、それが可能なところまで
きているのではないか、という危機感すらも感じられます。
本書でも指摘されているように、常にこの巨大企業であるGAFA、四騎士のことを理解しよう
とする姿勢が大切になってきます。
それは、一方的に彼ら四騎士に利用されるだけではなく、自分たちもしっかりと主体的な意思
を持ち、自らの頭で考えて判断する力を磨き続けなければならない、とも言い換えられます。
もはやこれら四騎士のサービスを一切使わないという生活は考えにくいところに来ています。
一方で、四騎士のサービスを上手に活用することで、今まででは実現し得なかった生活様式も
実現でき、人々がより豊かな人生を送るための手段も提供されています。
このようにGAFAと言えども良し悪しではなく、道具の1つとしての側面があります。
こうしたことからも、私たちがGAFAに依存しきることなく、しかし自分の生活にプラスに
なるような賢い利用法を模索し続けることが大切なのだな、ということができるでしょう。
本書のようなテーマに触れることで、自分自身の生き方にも思いを馳せることができ、
なかなかの読書体験をすることができました。