PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則 レイ・ダリオ著

稀代の実業家が明かす大成功のための”原則”

この本は世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者が、
その成功を手に入れる過程で作り上げた「人生と仕事の原則」をすべて明かした貴重な一冊。

…という位置付けの本です。

ネット書店(アマゾンや楽天など)のレビューを見ても、まあまあ高評価。

ただし低評価をつけているユーザーの意見によれば、この本もよくある成功事例の1つで、
万人に当てはまるわけではない特殊ケースだ、というニュアンスのものが目立ちます。

私の読後感もそのような印象を持ちました。

ただし、著者のレイ・ダリオ自身もそのことは認識しているのが類書との違いでしょう。

本書の原則は、あくまでブリッジウォーターという会社を経営する上で、レイ・ダリオという
一個人が、その経験上こうした方がいいと思って集めたものです。

もしかしたらこの本の読者にも有益なものがあるかもしれない、ということで、本書の原則を
使うか否か、さらにはどう応用して使うかは読者に一任されている、というのが特徴。

他のどんな本だって役立つかどうかは、実は読者の受け止め方と応用にかかているのは事実。

しかしそれを明確に本文中に書いているところが、少なくとも類書のような”万能法則”だ、
という傲慢さは感じられません。

本書はいわゆる「成功法則」を説く、よくある自己啓発系の本と似たような内容でしょう。

しかし本書が価値を持つのは、こういう本の読者が陥りがちな”盲信”をあらかじめ防ぐような
文章なり表現が散りばめられている、という点がまず大きいです。

そういう表現がされているから、読者としてもこの本を読みながら、自分の場合ならこの原則
はどうやったら応用できるだろうか?ということを考えながら読むサポートが得られます。

とはいえ、非常に厚くボリュームがある本です。
読み込むのにはそれなりの体力と根気が必要になる本であるとも言えるでしょう。

その分、この本を読み込み自分の人生や仕事の原則として使いこなることができれば、大いに
成功(自分の思い通りに近い状態)を得ることが容易になってくるのではないでしょうか。

本書の内容

この本が説いている原則は、大きく「著者の生い立ち」、「人生(個人的な判断や振る舞
い)」、「仕事(人生の原則を踏まえた上での組織内での判断や振る舞い)」のパートに
分かれています。

この本の原則が、レイダリオという個人が、その経験から編み出した原則であり、なぜ原則
がこのような形になったのか、その背景を理解することが大切であるということから、著者の
生い立ちがまず記述されています。

そして本書の肝である「原則」のパートでは、あとで必要な項目を参照できるように、
「人生」と「仕事」の原則の間に、それぞれの原則の見出しが一覧で載っています。

こういう構成であることからも、この本は一度読んで満足して本棚の肥やしになるような本、
というわけではなく、いつでも参照できるように座右の書とすべく本でもあります。

この本の表現では、目の前に現れる”問題”は、人類史の中ではほとんど「よくあること」で、
全く初めての、その個人に特有の問題などはほんの僅かであるとも言えます。

「よくあること」として認識することで落ち着いて問題の本質を分析でき、その事例に似た
事件や出来事を探し、その後の対応や顛末を参考にして問題解決に当たる。

こうした行動を繰り返し、その根本にある原則を集めて整理したものがこの本に載っている
”原則”である、ということになります。

人生で成功と言えることがあったとしたら、私が何かを知っていたからというよりも、知らないことにどう対応するかを知っていたからだ。私が学んだいちばん重要なことは、いくつかの原則(Principels)に基づいて人生のアプローチすることだ。それは、何が事実で、それをどうするかを知るのに役立った。これから、その原則をお伝えしていこう。

これは本書のカバー裏表紙にある文章です。

ここにもあるように、著者であるレイ・ダリオ氏は、
【知らないことにどう対応するかを知っていた】ことが成功の要因だと言います。

まさに賢人、「無知の知」を実践していた人物です。

全てを知ろうとしても不可能であり、自分が知らないことに出会った時にどう対応するか。
その対応や姿勢こそが、本書全体から学ぶべき著者の教えではないかと思います。

著者について

レイ・ダリオ
当代最高の投資家、起業家の1人。1975年にブリッジウォーター・アソシエイツを2LDKのアパートで始めた。40年以上をかけて同社を世界最大のヘッジファンドに育て、フォーチュン誌が「アメリカで5番目に重要な非上場企業」と呼ぶほどまでにした。彼は「世界でもっとも影響力のある100人の1人」(タイム誌)、「世界でもっとも富裕な100人の1人」(フォーブス誌)となった。コネチカット州で家族と一緒に暮らしている。
-Amazonより引用-

元々、この著者は「経済と投資の原則」を書こうと考えていたようです。

しかし経済と投資の原則が生まれた背景には、人生と仕事の進め方についての原則が存在して
いることに気づきます。

そこで、経済と投資という著者の専門分野ではなくて、純粋に人が生きていく上での
「よくあること」への対処法、そして仕事をする上での「よくあること」への対処法を、
それぞれ「人生の原則」「仕事の原則」として明文化しています。

こうした本を書いて世の中に貢献しようと考えた理由として、著者が得た成功は、決して著者
が特別な人間だからというわけではない、という信念があります。

人生・仕事で壁にぶつかる時、その壁はすでに歴史上の出来事として記録があります。
そしてその壁の乗り越え方やその後の世界についても記録があります。

よって、それを現在の状況に合わせて応用すれば、同じような結果が得られるはず、という
視点に立っています。

大抵の問題は、自分の人生経験・仕事経験の不足から生まれるもので、その対処法を知っている
いわゆる「大人」や「ベテラン」のように、経験として知っておくこと。

もしくは問題が発生したら、その問題に合わせて経験を知識として知っておく。

それによって、多くの人があらゆる問題の立ち向かうための力を得ることができる、だから
この本を書いた自分が特別なわけではないんだ、ということになります。

読後感、感想

ご自身が身を以て体験した好調な時と底辺の時代が、その主張に説得力を付与しています。

著者の生い立ちを第1章に持ってくるのは、そうした説得力を持たせた上で文章に引き込み、
この原則をより身近なものとして感じさせる効果もありました。

私は自己啓発系の本を読んで、読んだ直後は気分が盛り上がって何かできそうな気になり、
そのまま忘れてしまうタイプなのですが、この本は生々しいというか、血の通った本物の
啓発書とも言える迫力がありました。

最近のいわゆる”ビジネス本”と言われる自己啓発系の本は、大半が古典的名著の部分的な
再編成と言えるような薄っぺらいもの、という印象があります。

この本もおそらく、私が知らないだけで古典的な本に書いてあるようなことなのでしょうが
(歴史から学んでいる、と明言している)、著者自身の成功と失敗に基づいた血の通った、
何か温かささえも感じるような本になっているのです。

いわば、おじいちゃんが孫に向けて書いているかのような、教え諭すような意思を感じる。

本文の表現としては決してそんなことはなく、対等な相手として読者を尊重している姿勢が
感じられます。
にも関わらず、他の自己啓発系の本には見られない、見下す感じが一切感じられません。

これが本当に大成功した人物の余裕、達観なのか。
そんな温かさの裏にある”凄み”すらをも感じさせる、名実ともに重厚な本でありました。