学校と社会
ジョン・デューイ 著 宮原誠一 訳
本書についての概要
本書は、今で言う「アクティブ・ラーニング」に書かれた本であると言えます。
約120年以上も前から、教育現場の第一線で活躍していた人が唱えていた教育体系が、
いまだに色褪せずに存在していると言うことが、この著者の先見性を証明しています。
教育に携わるものとしては、デューイが唱える教育方法について、大いに共感を得るものと
いう感想を抱きます。
Amazonの商品紹介で、本書について以下のように書かれています。
学校とは暗記と試験にあけくれる受動的な学習の場ではなく、子供たちが自発的な社会生活を営む「小社会」でなければならない。このような観点からデューイ(1859‐1952)は、伝統的な学校教育に大胆な批判を加えた。自ら創始したシカゴ大学付属小学校での体験から生まれた本書が、戦後わが国の教育改革に及ぼした影響ははかり知れない。
-amazonより引用-
著者がシカゴ大学で創設した『実験教室』の検証講演の速記記録が本書の原型ですが、
その内容は、日本においても戦後の教育改革に多大な影響を及ぼしています。
農業国から急激な経済発展によって先進的工業国となったアメリカにおいて、
プラグマティズム(実践主義)を代表する思想家である著者が、学校教育についても
暗記と試験に明け暮れる受動的な学習の場ではなく
子供たちが自発的な社会を営む『小社会』でなければならない
と言う主張をしています。
社会が自主的な思考を身につけた人々により運営されていく中で、
学校教育を経ることによりその社会性を身につけられるようになれば、
自ずと社会が健全に保たれるであろう、と言うことは、教育に関わっていると
とても強く感じるところでもあります。
著者について
ジョン・デューイ(John Dewey、1859年10月20日 – 1952年6月1日)は、アメリカ合衆国の哲学者。チャールズ・サンダース・パース、ウィリアム・ジェームズとならんでプラグマティズムを代表する思想家である。また米国では機能主義心理学[1]に貢献したことでも知られている。20世紀前半のアメリカ哲学者のなかでも代表的且つ進歩的な民主・民衆主義者(ポピュリスト)だった。
-Wikipediaより引用-
プラグマティズム(実用主義)の代表的な哲学者でもあった著者が、大きな変革期にあった
アメリカ社会における教育を考えた時に、教育課程を修了した時点である程度の社会性を
身につけておく必要がある、と言うことを予見して提言した教育理論。
昔から、理想的な教育について考えたらこうなりますよって言うのがわかっていたんですね。
それでもなお【暗記と試験にあけくれる受動的な学習の場】と言う、デューイが否定した
教育体系が継続されている教育現場。教える側と教わる側の両方を経験しても、理想的な
教育体系だなんてとても思えませんね。
本書はこんな人にオススメ
120年以上前に書かれた教育理論ではありますが、これは教育に関わる人すべてに
読んで欲しいと思えます。そういった意味では、子どもがいる親も含めてですね。
この本で主張されている内容が公教育で実践されつつあるとはいっても、
未だ制度上はそうはなっていません。
従って、社会の変革が進む現在においては、家庭からもデューイの唱える
「自発的な社会生活が営めるよう」に、導いていく必要があると考えます。
書評まとめ
現在の教育理論にも通ずる名著である「学校と教育」。
私自身が教員免許の更新講習を受講中に、本書に触れる機会がありました。
更新講習で触れると言うことは、やはり今の学校教育にも取り入れるべき理論である、
と言う理解がなされている証拠でしょう。
戦後のGHQによる教育改革において本書の理論が参考にされたと言う割には、
現在の教育制度は「暗記と試験にあけくれる受動的な学習の場」になり下がっています。
現場としては、こうせざるを得ないと言う、苦しい言い訳がないわけではないです。
しかし、理想とする状態がわかっていながら何もせずに従来の形に従うと言うのは、
教育に従事する者としての責務の放棄とも捉えられます。
そういった意味で、私自身も生徒が自発的に社会生活を営めるように、
日々の指導の中で少しずつ実践していこうと思うのです。
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