脳へのダメージ対策は運動が効く【『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン著】

スマホとの関わりを反省し、自分らしい人生を送るために、この本を読んで自分なりに吸収した部分を記録するために本記事を残す。

書評とは異なるが、ひとつの読み方として受け止めてもらいたい。

最も良いのは、ご自身でも本書を読んでみることなのは言うまでもない。

『一流の頭脳』の著者による「スマホの弊害」啓発の書

今や一人一台が当たり前となったスマホ。スマホなしの生活なんてもう考えられないほど身の回りに浸透してきている昨今、スマホの使いすぎが脳へ与える悪影響が度々指摘されてきた。

有名なところではiPhoneの生みの親、スティーブ・ジョブズは子どもにデジタル機器を触らせなかったというエピソードがあるほど。

この世界に「スマートフォン」を送り出した張本人は、その道具が人間に与える悪影響を理解していたのかもしれない。

そんなスマホの人間への影響を、きちんと科学的手法で調べて確認したのが、本書の著者であるアンデシュ・ハンセン氏だ。

氏はスウェーデンで精神科医として働きながら、脳のパフォーマンスを十分に引き出すには運動が最適だということを証明した(『一流の頭脳』参照)人物でもある。

そんな彼が、スマートフォンの使いすぎによる弊害、依存してしまうメカニズム、それらへの対策を一般向けに述べたものが本書の内容となる。

なんとなくスマホの使いすぎは良くないのではないか、とモヤモヤしている人が多い(私もその一人)と思うが、本書はそんなモヤモヤした心配を、冷酷な事実として明らかにしてくれる非常に優れた良書だ。

スマホは1日2000回以上接触できる報酬の源

私たちは今、高度に発達した情報社会に生きている。

その日常では、非常に発達し便利になった電子機器等(例えばスマホ)を駆使して、様々なサービスを利用している。

もはやスマホなしでは生きていけないのではないかと思うほどに生活に密着している。

ではなぜそこまでスマホが私たちの生活に入り込むことができたのか?

それはスマホを使うことが私たちが古来より生き残るために発達させてきた、脳内の「報酬」発生機構に組み込むことに成功したからだ。

本書によれば、スマホを触ることは脳内に報酬物質が放出される行動であるという。

つまりその行動(=スマホを触る)は生き残るために有利な行動であると判断されている。

なぜか。

人類は長い間、飢えとの戦いを続けてきた。

そのためあらゆる行動は、飢えを避ける行為につながる。

スマホを触るということは、そこになんらかの新しい情報があるかもしれない、という期待感を満たす行動であり、その期待すること自体に報酬が支払われているというのだ。

これは食物を探そうとするときに、木に登って果実を手に入れられるかが不確実なときにも、とにかく木に登って確認するという行為に似ている。

木に登る前には、その気に果実が実っているかどうかはわからないが、もしかしたら食物が手に入るかもしれない。

その小さな可能性を逃さないで探索することが、生存にとって非常に重要な要素となるのだ。

人類のこの性質は、次から次へと興味の対象が移り変わることにも言える。

一本の木に果実がなくても、他の木や別の場所に高カロリーな食物があるかもしれない。

かつ、周囲に危険が迫っているかもしれない。

そんなふうに常時、あらゆる方向に注意を向けていることが、生存確率の向上に役立ってきた。

現代では、スマホがその欲求を満たしてくれる。

ただじっと座ってスマホをいじる行為は、動き回ることによるエネルギーの消費を抑え、新しい可能性を探しながら、あらゆる危険を察知するための行動につながる。

そしてそれらの行為を繰り返す度に、脳内では報酬物質が放出されて人はもっとスマホを触りたくなる。

この繰り返しがスマホへの依存を高めることとなる。

人間は未だに狩猟採集民である

人間はその始祖が生まれた時から、生存にとって優位な性質を備えた個体が生き残ってきた。

急激に環境が変化し、その性質が円滑な社会生活を妨げうる事態になっても、それは変わらずに稼働し続けている。

だからまず、私たち自身は未だに狩猟採集を行なって生きている人類となんら変わらないということを自覚することが大切となる。

その上で、スマホを触ることが自らの性質上、とても気持ちのいい行為なのだと認識することがまずは重要だと言える。

著者の前著『一流の頭脳』に書かれているように、脳のパフォーマンスを高めるには運動が効果的だと先述した。

これも狩猟採集生活をしていたころに、生存確率を向上させるために脳が進化した結果であるという。

狩猟採集生活は、とにかく歩き回って食物を探すことが最優先である。

だから食物を探すための移動(=ウォーキングやランニング)を行うことで、脳から報酬が支払われたり、身体機能や脳のパフォーマンスが向上するように出来ている。

このことは脳のパフォーマンスを向上させることに着眼してのことだが、スマホとの上手な付き合い方を模索するためには、大きなヒントになる。

とはいえ、スマホを捨て去るわけにはいかない

スマホを触ることで擬似的にかつての狩猟採集生活時代の報酬が得られるが、現実世界ではそれはほとんど良い影響を及ぼさないことは明らかだ。

ではスティーブ・ジョブズの子どものようにスマホを完全に触らないようにすべきなのか。

脳や身体にとって良いのはそうすることかもしれない。

しかし今やスマホなしでは買い物もできなくなってしまう。

最も良い着地点としては、スマホを使いこなしつつ自身の心身を健康に保つことである。

しかし脳の仕様上、意思の力だけでは不可能だ。

だから物理的にスマホを使いたいと思わないような工夫をすることが大切である。

まず自分が1日に何時間スマホを触っているかを把握する。

その上で、画面を見ても良い時間を制限する。

スマホでなくてもいいことは、別のアイテムで代用する(目覚まし時計を使う、等)。

SNSなどの通知はすべてOFFにし、電源もOFFにする時間帯を設ける。

仕上げに、それらを実行できるような意思力を強化する。

が、それが最も難しく、スマホの問題をややこしくしているのだが、この本をこの著者が書いている意義はそこにある。

解決方法とは、すなわち運動である。

スマホの使用時間によって精神面への影響の度合いが大きく異なることが、本書の中でも明らかになっている。

そしてまた、生活の中にわずかな運動習慣を取り入れるだけで、スマホの使用時間を制御しやすくなる(運動すればスマホを触る時間も減る)。

具体的で詳しい対処法は、本書244ページからの「デジタル時代のアドバイス」に記載されているので、参照してほしい。

実践してみた感覚や感想

本書を読み終え、私も実際に運動を取り入れたり、SNSやニュースなどの通知をすべてOFFに設定してみた。

すると、スマホを気にする頻度が激減し、本来やるべき作業にも集中力が続くようになった実感がある。

また、運動(私は近所を1時間ほど散歩した)も取り入れてみたが、確かに1回だけでも気分が明らかに爽快になった。

心拍数が上がり息が切れ、汗をかくくらいの運動が最も望ましいとはいうが、うっすら汗ばむ程度でやや息が上がるくらいの早歩きでも精神面での効果はてき面である。

本書では1回45分程度、週に3回以上行うとよいとあるが、確かに1回だけでは数日後には気分は元通り、行動意欲なども減退して怠惰な雰囲気が戻ってきた。

だが運動習慣を身につける(2〜3週間続けると習慣化されるという)までは意思力で頑張り(スマホの通知OFFで集中力は続く)、その後は習慣的に運動を行うようになれば目覚ましい変化が訪れるであろう…ということは容易に予想できた。

本書の内容を認識した上で運動をすると、その変化の大きさに驚くばかりである。

その後、近所の散歩は1時間と決めずに10分でもいいからやろうと決め、一度出かけると1時間弱は歩けるもので、無理なく運動が習慣になりつつある。

実際、運動(散歩程度の軽いものでも)をしたあとは、非常に気分がよく頭もクリアになっているのがわかる。

その気持ちよさを得たくて、運動したいというふうにも思えるようになってきた。

これは自分でも驚いているほど。

本書では筋力トレーニングよりも有酸素運動のほうが効果的だと書いてあるが、私の実感としては、筋力トレーニングでもある程度の爽快感と思考の明瞭化は感じられた。

しかし継続性や運動後の思考の明晰さは、有酸素運動のほうが強く、また継続性もあったように思う。

これは本に書いてあったせいもあるかもしれないが、主観的にはそのように感じた。

あくまでも私個人の感想であり、私は普段あまり運動しない生活をしていたせいもあり、少しの運動で顕著に違いが感じられた可能性もある。

しかし過去にうつ病に罹患した際も、無理矢理に仕事で体を動かすことになってから寛解した経験もあり、運動自体の効果というのはかなり信憑性があるように思われた。

今後も軽い運動、ウォーキングのような無理のないものを続け、集中力や意思の力をしっかりと維持していきたいと思った。

というか、普段からよく歩くような生活パターンに変えた方がいいな、と心底思うのだった。(ちなみに狩猟採集生活では1日に10km以上、歩数にして10,000〜14,000歩は歩く生活だったのが、現代の都市生活者では1日に7,000歩程度にまで減少しているとのことだ)。

スマホ脳
アンデシュ・ハンセン/久山 葉子 新潮社 2020年11月18日頃
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