ハガキ道に生きる 坂田道信 著
複写ハガキ実践のお手本
本書は「複写ハガキ」を書き続け、様々な人に大きな影響を与え続けている坂田道信氏が
実際に書いているハガキの内容を集めた本です。
前回の記事(「ハガキ道」の記事参照)で紹介した本に繋がる内容のもので、複写ハガキで
築く人間関係を垣間見ることができる一冊です。
これから複写ハガキをはじめようとする方や、複写ハガキを書きたいが、一体どんなことを
書いていけばいいのか迷われている場合に、一つの指針を示してくれるはずです。
この本では、著者の坂田氏のまっすぐな生き様が現れているかのような素朴な文章が、
独特の雰囲気を纏った手書きの文字で綴られています。
「ハガキ」という媒体を利用する意味
本書に記載の坂田氏の実際のハガキに書かれた文章は、もちろん活字で印刷されています。
しかし章末の扉には手書きのハガキも乗っており、これこそが活字にはない、人間臭さとも
言えるリアルなコミュニケーションを図れる理由だと理解できるはずです。
決して達筆というわけではない坂田氏ですが、それでも非常に丁寧に1字1字を書き上げます。
そうした気持ちの面での”熱さ”、相手への思い入れのようなものを感じ取ることができます。
これが手紙のような長文であったとしたら、もしかしたらその”熱さ”は薄れているかも
しれません。
ハガキという限られた紙面に凝縮して書き表されている文章だからこそ、鬼気迫るような
思いを感じ取ることができると思うのです。
本書は、そこまでボリュームのある内容ではないですし、書いてあることもハガキ道として
ハガキを書き続ける上での気持ちの持ちようなどに触れているにすぎません。
しかし本書の存在が意味するところは、坂田氏がどんなハガキを書いているのか?
そのリアルな姿を知ることができる、という一点にあるといえます。
実社会において、自分が関わらないところでやり取りされている手書きの文章など、触れる
機会なんて滅多にあるものではありません。
ですが本書を紐解くことで、自分以外の誰かが、自分以外の他の誰かに宛てて書いた文章を、
その本人の肉筆によって表現されたものをみることができるのです。
手書きのツールを見直す契機
ハガキ道をはじめようとする方にとってはもちろんですが、普段のコミュニケーションにて
思いが伝わりにくいとか、思ってることをどう伝えればいいか悩んでいる方にとっては、
この本がきっかけとなって、コミュニケーションの改善に役立つのではないでしょうか。
直筆のハガキを印刷したものを見るだけでも、なんともいえない感情が惹起されます。
これが直筆で、相手の筆跡を追えるほどのリアルさで、かつ自分にあてて送られた気遣いの
文章だとしたら…
想像しただけで鳥肌が立つほどの感情が呼び起こされそうです。
この本を通じて、コミュニケーションはやはり直接的にその人の存在を感じられる形で
行うことが大切なのだと、思うに至りました。