マンガ老荘の思想 蔡志忠(作画) + 和田武司(訳) + 野末陳平(監修)

宗教・思想・哲学

マンガ 老荘の思想

蔡志忠(作画)+ 和田武司(訳)+ 野末陳平(監修)

マンガ 老荘の思想 (講談社+α文庫)

 

老子と荘子による「道」をマンガで。

老荘(=老子・荘子)の思想とは、「道」(タオ)の思想。

儒教のような理性ではなく、人間も自然の一部として自然体で生きようという思想。
今の時代に促しているような考え方で、人間本来の生きかたにも促していると感じられます。
脱力系とも言える老荘思想。だからこそ、私は学生の頃からその内容には惹かれていました。

しかし、その原文は漢文らしい格言的な表現の連続。
一読した限りでは字義通りに読めないこともないけれど、いまいち腑に落ちない。

そんな「内容は素晴らしいと知っているのに、原文に触れると意味不明」という、
歯痒い問題を解決してくれるのが本書『マンガ 老荘の思想』。

ついに出たか、と見つけ次第購入です。
が、出版自体は1994年9月とのこと。やっと出会えたとも言えるそんな一冊です。

 

荘子と老子、それぞれの「道」

老荘思想と一口に言っても、その思想を体現するには各人のやりやすい方法があります。
素になるエッセンスとしては共通するものの、やはり細かいところでは微妙に異なります。
そんな違いを感じられるのも、荘子と老子の思想を並列させたからこそ。

本書の構成の妙によって、多角的な「道」の思想が理解できるようになります。
私の印象では荘子は現世的、老子はより理想に近い「道」を説いているように感じました。

これも人によって受け取り方は異なるでしょう。
ぜひ老荘思想、道(タオ)に興味を持つ方には一読いただきたい本です。

現在の社会はやや「儒教的」な価値観が支配的ともいいます。
つまり理性によって自らを律する、我慢を強いる社会です。
そのような価値観のなかでは、社会に適合しにくい人は苦しい思いをしがちです。

一方で老荘思想では、自然体であることをよしとする思想。
儒教的(孔子)的なカチッとした価値観とは対極にあるような考え方です。

従来の価値観(儒教的)による社会システムが破綻しかけている昨今、まさに老子的な、
自然体を意識する生き方や社会のあり方を見直す契機になるのではと思っています。

そんな背景もあり、広く「老荘思想」が広まればいいなあとも思っていますし、自然体を
よしとする風潮が主流になれば、少しは生きるのに楽な社会になるのではとも感じています。

 

小難しいことを好む人こそ、マンガがオススメ

マンガだからと小バカにしていた過去の私は、大いに反省すべきでした。

白文や書き下し文、それに現代語訳と揃っている学術的な「老子」を読むのもいいですが、
マンガで「画像」として事例を示すことで、具体的になにを表しているのがが一目瞭然です。

もちろん学術的な文章でしっかり理解できて、自分の生活、人生に生かすことができるなら
なおのことよいでしょう。

しかし研究者でもない限りは、厳密な解釈や正確な訳文はあまり必要性がなく、
むしろマンガで大まかな枠組みを理解し、個別のエピソードも視覚的イメージで記憶しておく
ほうが日常生活のなかでは活用しやすいなあと思うのです。

私自身は、こうした”高尚な思想”を学ぶには、原文を読み、そのあと書き下し文、そして訳文
とステップアップしていき、じっくり味わいながら理解していくものと思っていました。

しかしその方法では時間も手間もかかり、なによりよくわからない漢文を延々と読み続ける
という苦行に耐えることができませんでした。

結果的に、例えば有名な「上善如水」くらいしか覚えておらず、しかもその内容としても
表面的なことしか理解できていませんでした。

それではただ「より良い善は、水のようなもの」と記憶しただけであり、水のようなもの、
という言葉だけでは生活に落とし込むことができません。

一方で、マンガであっても、原文に含まれていたであろう細々した意味は、大胆に取捨選択
され、主題となるテーマを中心に絵にしている事から、直接的に理解が可能となります。

むしろマンガという表現方法を採用する事で、正確な細かいニュアンス等は削られる恐れが
ありますが、老荘思想を理解して人生に生かすという目的に対してはむしろプラスに働く。

そう言うこともできなあ、と気づいたわけです。

そんなわけでマンガだからと小バカにして読まずにいた私は、大いに反省をしているのです。

 

他にもある「マンガ〇〇の思想」シリーズ

今回、長い間理解したつもりになっていた老荘思想について、改めてマンガで読み直すという
ことをしてみたのですが、これが思いの外理解しやすくてハマってしまいそうでした。

本書は「講談社+α文庫」のうちの「マンガ 中国の思想」シリーズの1冊で、他にも
マンガ 孔子の思想
マンガ孫子・韓非子の思想
マンガ菜根譚・世説新語の思想
マンガ 禅の思想
マンガ 孟子・大学・中庸の思想
という本が既刊のようです。

”この本を読むような人が興味を持つであろう本”を、巻末の案内では記載しています。
まさに本の虫のにとっては目の毒、無限の読書地獄へと落ちていくきっかけになります。

禅や古代中国の思想は、長い年月を経てなお、現在の私たちの生き方のヒントになります。
時の洗礼を経てなお残っている、それだけ洗練された思想です。

激動の時代(絶えず時代は激動していますが)にこそ、広く思想を学び、自分の価値観に合致
した思想を身につけて、よりよい人生を送っていければいいと思います。

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